2016年読了本一覧-2

16.04.20

87◇伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」☆☆
 住人が相互に監視し密告する。危険人物とされた人間は冤罪でも弁護もなくギロチンに
 かけられ死刑。圧倒的な権力をもつ「平和警察」により犯罪率だけは減った世界、だが
 これは正義なのか?

88◇米澤穂信「満願」☆☆☆☆
 このミス系で一位というだけあって濃密な話。

89◇西條奈加「秋葉原先留交番ゆうれい付き」☆☆☆
 無駄にイケメンだが霊感だけは高い無能の警官と、オタクで小デブで毒舌だが有能な
 交番の巡査が、死んだ状況や犯人や自分のことすら記憶をなくした足だけの幽霊に
 なった「私=通称:足子」ともに、犯人捜しに乗り出す。足子の家族関係だけは違和感
 がぬぐえない。悪い意味で似たもの夫婦で似たもの親子だったということか。

90◇渡辺優「ラメルノエリクサ」☆☆
 女子高生・小峰りなの信条は不愉快ごとは「必ず復讐で」ケリをつけること。そんな物騒な
 彼女がある日、夜道で何者かにナイフで切り付けられる。手がかりは、犯人が残した
 「ラメルノエリキサ」という言葉のみ。過去最高の復讐に燃えるりなは事件の真相を
 追うが……。エキセントリックなりなとその信条を知っている姉と、冷静な友人は
 魅力。本気で読み込むよりパラパラ気楽に読む程度で。

91◇米澤穂信「真実の10メートル手前」☆☆☆☆☆
 「さよなら妖精」に続く大刀洗シリーズ3作目。ジャーナリストとして埋もれた事件を
 追い続け真実にたどり着く、という骨子ながら、謎が解け犯人を指摘して終わりではなく
 そしてそれからあなたはどうする?という問いかけも含む、濃さと深さのある作品。

92◇上橋菜穂子「闇の守り人」(再読)☆☆☆☆
 守り人シリーズ2作目。バルサの過去編。

16.04.28

93◇中沢明夫「きらきら眼鏡」☆☆☆
 主人公が恋に落ちたのは、年上で恋人のいる、世の中が全て輝いて見える「きらきら
 眼鏡」を心に持ったステキな女性だった。

94◇三上延「江ノ島西浦写真館」☆☆
 唯一無二の親友を傷つけてしまったことからカメラマンの道を諦めた主人公。
 遺品の整理で祖母の経営していた写真館に訪れたことから、100%自分が悪いと思い
 込んでいた過去の事件を思い直す気持ちになるが…。絡み合った経緯があるとしても
 ネットの恐ろしさをなめていた主人公の過失だと思う。

95◇本田有明「ファイト!木津西高校生徒会」☆☆
 受験に失敗し、三流高校に入学した失意の主人公。勘違いと反発から生徒会会長に
 立候補することになり!?ストレートな青春物語。

96◇小笠原慧「あなたの人生、逆転させます」☆
 サブタイトル;美夢のメンタルクリニック日誌とある通り、セラピストとして謎の
 症状に向かい合う新米医師・美夢。ベースは面白い設定なのに、展開がぬるすぎる。
 女性職員同士の微妙なマイナス設定は別にいらない。これが主人公の可憐性を際立
 たせる狙いなら失敗。
 
97◇森晶麿「ホテル・モーリス」☆☆☆☆
 腹違いの叔父が経営していた、赤字だらけのリゾートホテルの臨時支配人に就任した
 主人公は、暴力団や、クセのありすぎる客しかこない状況に、全力で途方にくれた。
 しかし、急遽帰国した敏腕強面コンシェルジュと、有能な美人マネージャとともに
 次次やってくるトラブルとお客を、生来の機転でおもてなししていく。

98◇市川哲也「名探偵の証明」☆☆☆
 名探偵の代名詞とまで評された探偵・屋敷啓次郎。しかし、ある事件をきっかけに
 探偵業は開店休業状態となり困窮にあえいでいた…。旧友やパトロンの依頼を最後の
 事件にしようと、老体にムチ打って資産家に届いた脅迫状の謎をめぐり、新世代探偵
 ・蜜柑花子と対決を受けたのだった。悪くはないけど、誰の目線にも寄れない。

16.05.07

99◇近藤史恵「モップの精は旅に出る」☆☆☆
 プロのビル清掃員キリコシリーズ5作目・最終巻。キリコを巡る謎の完結編。
 察しが良すぎることからトラブルも多く、家族関係も親密でなくなってしまった
 キリコのバックグラウンドが明かされる。夫の優しさは草食系。

100・101◇小林朋道 「鳥取環境大学の森の人間動物行動学シリーズ」1・2
 「先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!」☆☆☆
 「先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! 」☆☆☆
 自然に囲まれた鳥取環境大学で起きる動物たちと人間をめぐる珍事件を人間動物行動
 学者……というかただの生物大好きおじさんの視点で描く、ほのぼのどたばた騒動記。
 学校内でヤギを飼う、研究室中飼育かごだらけ、飛べないハトと一緒に通勤し
 脊髄反射で生き物を捕まえる。難しさもなく軽く読め、さりげなく勉強になるシリーズ。

102◇宮部みゆき「過ぎ去りし王国の城」☆☆☆
 たまたま銀行で見つけた不思議な魅力のある城の絵。コツを掴めば絵の中に入れる
 ことが分かった僕は、絵の上手な同級生の助けを借りて、塔にいる少女救出を考える。
 ただ単に絵に入れるお手軽ファンタジーでなくて身体に相当負担がある(病名もリアル)
 というのがさすがの設定。読了後すぐは飲み下せなかったけど、時間が経つと納得。

103◇一條次郎「レプリカたちの夜」☆ もしくは無し
 動物のレプリカを作る工場で働く主人公は、とうに絶滅したシロクマが工場内を
 歩いているのをみかけたという情報をもとに調査を押しつけられた。独特な世界と
 ユーモアがあるので評価が(ごく一部で)高いのは分かるけど自分には全く合わない。
 
104◇森晶麿「COVERED M博士の島」☆
 孤島に作られた天才博士の研究所、破格の値段で研究素材となる契約をした主人公は
 誰もが振り返る美形となる美容整形手術を受けた。しかしそれは天才博士の研究の
 一端でしかなく……。視野が狭く偏執的としか読めず。

16.05.16

105・106・107◇小林朋道 「鳥取環境大学の森の人間動物行動学シリーズ」3・4・5
 「先生、カエルが脱皮した皮を食べています!」☆☆☆
 「先生、キジがヤギに縄張り宣言しています! 」☆☆☆
 「先生、子リスたちがイタチを攻撃しています! 」☆☆☆
 1巻以降は、読む順番は適当でも大丈夫。

108◇森晶麿「かぜまち美術館の謎便り」☆☆
 早世した兄の遺した絵と、町に起きた日常の謎が絡み合う。田舎の美術館キュレーター
 として赴任してきたほわっとしたイケメンとその娘。恋の行方も筋としてあったような
 気がするのに、アレッ?って決着。なんかこじつけな感が強い。

109◇山之口洋「天平冥所図会」☆☆☆
 奈良時代を舞台にしたファンタジー+ミステリ風味。東大寺の大仏建立時期、下っ端
 役人の主人公が、権力をめぐる派閥抗争に巻き込まれ、末端ならではしわよせに悩んだり
 後半はエッ?という設定で話に参加したり。馴染みのない時代が舞台だけど、
 読み始めればすんなり理解できる。

110◇小路幸也「花咲小路二丁目の花乃子さん」☆☆☆
 花咲小路シリーズ3作目。学校に見切りをつけ、親戚の花屋で働き始めた主人公の少女。
 町のマドンナとも言える花乃子さんと、イケメンの双子の兄弟とともに、学校では
 学べないものを得るために新生活を始める。全員いい人で収まる所に収まる安定の作風。

111・112◇上橋菜穂子「鹿の王 上・下」☆☆☆☆
 妻も子も、率いる一族もなくし奴隷になった40歳のおっさんが主人公。この時点で
 児童書じゃない(笑)。奴隷が使い捨てされる過酷な塩鉱山に突然凶悪な山犬が襲来。
 一人だけ生き残った主人公は、母親が命をかけて守った奴隷の子供を養うことを決意する。
 貴族ながら医学に携わるもう一人の主人公の目線とともに、侵略国、被侵略国の関係と
 戦争弱者の処遇や死に様、信仰による医療の違い、命の扱い方まで考えさせられる。
 一読だけだとストーリーに翻弄されてゆっくり考えられないかも。

113◇椹野道流「時をかける眼鏡・1 新王と謎の暗殺者」☆☆☆
 休暇を使って母の故郷マーキス島を訪れた眼鏡の主人公は、不思議な雰囲気のある
 法医学博物館に偶然立ち寄り、とある魔術のかかった本に触れ、はるか過去にあたる
 マーキス島にタイムワープしてしまう。たまたま立ち寄った家で殺人事件に遭遇!
 王位継承に揺れる王家の兄弟と知り合いになったことから、習いたての法医学の知識を
 もとに重大な事件の謎に挑まざるをえなくなる。

114◇椹野道流「時をかける眼鏡・2 医学生と、王の死の謎」☆☆☆
 元の時代に帰るあてもない眼鏡の主人公。王家の下働きという扱いで過去の生活を
 楽しみ始めていた。そんな矢先、国威をかけての即位式で招待客の殺人事件がおき、
 またしても法医学の知識をもって真相究明に挑む。

115◇椙本孝思「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」☆☆☆
 犬神博士と果菜と黒彦シリーズ2作目。夏休みの連続殺人から一転、平凡な高校生活に
 戻りほっと一息ついた黒彦の前に現れたのは学校一の変人美少女「探偵部」夢野姫子!
 なぜか高校に現れた犬神と果菜の二人も加わり、一人の女生徒が屋上から飛び降りた
 事件をめぐる推理劇が始まる。ライトミステリ系にシフトしようとして?魅力ダウン。
 主人公ハーレム設定なんか不要。

116◇香月日輪「大江戸かわら版・4」☆☆☆
 桜に浮かれる春の大江戸で、かわら版屋の記者として実力をつけてきた雀は、とある
 いざこざから女の子とその連れを助け出した。それが縁となり、その女の子から空に
 浮かぶ絶景!竜宮城に招待されることになった!

117◇楡井亜木子「私たちの屋根に降る静かな星」☆☆☆
 40歳手前で離婚せざるをえなくなり職も住むところも失ったりりか、そんな彼女に
 高校の同級生・武藤から「うちの家に住まないか?」と誘われる。もう一人の同居人
 ・桜庭は無口無愛想だが、戸惑いながらも微妙な距離感が心地よく、徐々に新しい
 生活を楽しみ始めた。読み心地はよく、ほどほどに薄い内容。

118◇西田征史「実験刑事トトリ」☆☆☆
 ドラマのノベライズ作品。動物生態学者からいきなりの転向で刑事になった都鳥と、
 彼の指導役としてふりまわされる若手刑事・安永。犯人が分かっている状態で推理
 するコロンボ形式。

119◇香月日輪「全裸男と蛇男」☆☆
 警視庁生活安全部遊撃捜査班シリーズ2作目。呪いを操り他人を破滅させることに
 手慣れている美人秘書を追い詰めることはできるか? 長谷(父)がかっこよすぎて
 メインとなる刑事メンバーが霞んでしまう威力。

120◇山下貴光「丸亀ナイト」☆☆☆
 有言実行クラブシリーズ2作目。ひょんなことから謎の封筒のお届けおつかいを
 頼まれた高校生カメ君。女子高生から恋人が消えた事件を依頼されたネコとイヌ。
 人の手に渡り続ける封筒と、大学裏サイトにまつわる事件がじわじわと繋がりだし
 とある共通点が浮かび上がってくる。伏線がもうちょっとないと納得しにくい。

121◇小路幸也「花咲小路四丁目の聖人」☆☆☆
 花咲小路シリーズ1作目。古くて所々シャッターが降りながらも、若い世代で
 なんとか盛り上げていこうとしてる商店街が舞台。近くの山でレアメタルが出た
 ことから、商店街全体が地上げ対象に!とんでもない財力で買収にきた相手に
 商店街に住むジェントルマンがとった作戦とは!?売買に同意したい人も多かった
 気がするので、これは果たしてめでたい解決なのかな〜とも思う。

122◇太田忠司「琥珀のマズルカ」☆☆☆
 肉体から離れた魂(離魂)を戻せる特殊な才能を持つ刑事が主人公。しかし事件を
 めぐり難解な離魂に遭遇した主人公は、さらに上級テクニックを持つ「マズルカ」
 と呼ばれるミステリアスな人物に頼るしか方法がなかった。

123◇森晶麿「黒猫の遊歩あるいは美学講義」☆☆☆
 異例の抜擢で教授になった美青年「黒猫」と、高名な学者の母に憧れながら鳴かず
 飛ばずの研究成果しか出せない「私」。エドガー・アラン・ポーの名作講義を通じ
 6つの謎と美学の講義。どっぷり漬かっては読めないシリーズかも。

124◇小川一水「煙突の上にハイヒール」☆☆☆☆
 ほんの少し先の未来を描くSF短編集。気楽に空を飛べる一人用ヘリ、人間そっくりの
 ロボット、パンデミックで極端な人口ピラミッドになってしまった日本。どれだけ
 文明が進んでも、人とモノ、人と人のつながりはあたたかくなくっちゃね。

125・126◇小林朋道 「鳥取環境大学の森の人間動物行動学シリーズ」6・7
 「先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!」☆☆☆
 「先生、モモンガの風呂に入ってください!」☆☆☆

127◇森晶麿「四季彩のサロメまたは背徳の省察」☆
 学園の王子として朗読部をハーレムとしている青年と、青年が心惹かれるカラス
 と呼ばれる生徒。奔放な妹と、地味な女教師の姉妹。妖女サロメをテーマにしている。
 背徳というほど乱れているわけでもないし、そんな都合良く惚れられないだろ…。
 同じ身体を使った人格変動?みたいなものがよくモチーフになってる気がする。

128◇小路幸也「アシタノユキカタ」☆☆
 見も知らぬ女から、一人の少女を札幌から熊本まで送り届けてもらえないかという
 依頼を受けた「修一」。軽自動車で日本縦断しながらお互いの事情が錯綜し…。
 はすっぱで世を拗ねたキャラクターにしようとしてた雰囲気があるのに、中盤からは
 いつもの考え方をする特徴のない主人公キャラに。肝心の友人の扱いも雑。

129◇上橋菜穂子「夢の守り人」(再読)☆☆☆☆☆
 守り人シリーズ3作目。トロガイ師の過去とタンダの災難編。何度も読む価値のある本。

130◇入間人間「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 3」☆☆
 まーちゃんからの独走的チョコにおびえつつ平穏な毎日を送るみーくん。しかし近隣地区
 では動物惨殺事件が相次いでおり、それがどうも死んだはずの妹の仕業らしい…。

131◇沢村凜「ヤンのいた島」☆☆☆
 生物学者として憧れの島に上陸した瞳子。しかしそこは生物のパラダイスではなく
 現地住民と近代植民地化を強行する政府軍が戦う激戦地になっていた。ゲリラ側の捕虜
 となった瞳子はゲリラの頭目・ヤン少年との不思議な絆に気づき、彼の背負う未来の
 大きさを垣間見ることになる。

132◇壁井ユカコ「サマーサイダー」☆☆☆
 幼なじみの少年二人と少女一人は、廃校になった母校の中学校の備品整理をするために
 微妙な三角関係を保ったまま集まった。一年前の夏に不審死した担任の怪奇な思い出と、
 少年少女たちがお互いに言い出せない思いが衝突する。装画の市川春子氏がそのまま
 漫画にできそうな設定。

133◇椙本孝思「露瓶村事件 生き神少女とザンサツの夜」☆☆☆
 犬神博士と果菜と黒彦シリーズ3作目。仕事で遠方に行ったはずの犬神博士から届いた
 年賀状。果菜を連れて雪深い山村・露瓶村にやってきた黒彦は村の有力者の一種異様な
 葬列と信仰、村民の奇妙な連帯感と上下関係に振り回される。

134◇和ヶ原聡司「はたらく魔王さま」☆☆☆
 勇者に世界征服を阻まれた魔王は瀕死で異世界・日本にたどり着く。枯渇寸前の魔力で
 戦う相手は勇者でも魔法使いでもなく、異国で生活をするために人間として働きお金を
 稼ぐこと!?最低限ながら住居と職業を手にし、ボロ自転車をかっとばしバイトに精を
 出す魔王の前に、同じく日本で働きながら魔王を捜していた勇者とエンカウント!

135◇宮部みゆき「桜ほうさら」☆☆☆☆
 父にかけられた横領疑惑からの唐突な切腹死、お家断絶は免れたものの、父の濡れ衣を
 晴らすためツテを辿って江戸までやってきた主人公。手先の器用さを活かして写本を
 生業にしながら、以前の上司の依頼で伝説の筆跡偽造師の行方を探っていた。

136◇井上有為「恋と禁忌の述語理論」☆☆☆
 主人公がド田舎に暮らす叔母に会いにいくのは彼女のとある才能をアテにしているから。
 探偵たちが推理し決着を付けた事件を再度論理的に解き明かす、探偵殺しの名探偵。

137◇沢村凜「ノーマジーン」☆☆☆☆
 少しだけ未来の世界。親族の起こした事件により、最下層・最低減の生活しかできず、
 名人と謳われた師匠の作品のレストアを細々と続ける、足が不自由な主人公。区の配給で
 型落ちした介護ロボットの支給があるという知らせを受けたが、玄関先に現れたのは
 片言の言葉を話せるだけの赤毛の小さな猿だった…。

138◇萩尾望都「音楽のありて」☆☆
 1970年代に発表された作品集。あの作品の原型かな?という掌編もあり。

139◇石持浅海「トラップ・ハウス」☆☆☆
 夏の思い出にとサマーキャンプに来た大学サークル仲間の一行。森の奥まった所に
 ある大きなトレーラーハウスに盛り上がる一行だったが、開かなくなったドアから
 始まる、命の危機さえ感じる、ある壮大なトラップの連鎖にはまりこんでゆく。

140◇越屋オサム「せきれい荘のタマル」☆☆☆
 大学斡旋のおんぼろアパート、主人公の隣室に住むタマル先輩は空気の読めない&
 ド天然おせっかいと好奇心の固まりのようなトラブルメーカーだった!

141◇恒川光太朗「私はフーイー」☆☆☆☆☆
 沖縄を舞台にした怪異譚。独特の精神的な囲い込みと、社会的な閉鎖感。二重三重の
 意味でどこにもいけない静かな諦念感。寝る前にふと思い出すと暗闇が怖い。

142◇椹野道流「ローウェル骨董店の事件簿」☆☆☆
 国を揺るがした大きな戦争が終わり、残ったのは人々の心に残った戦争の爪痕だった。
 徴兵を徹底拒否し投獄された兄と、自発的に戦地に赴き、顔の大ケガと利き手の損傷の
 ため医師の道が閉ざされ法医学者として生活する弟。顔も合わせないほどすれ違った
 兄弟を再び結びつけたのは殺人事件と、かわいい居候とかわいい幼なじみのおかげだった。

143◇中田永一「吉祥寺の朝比奈くん」☆☆☆☆☆
 恋するっていいね!作者独特のねじれをもスパイスにした恋愛短編集。

144◇穂村弘「蚊がいる」☆☆☆☆
 エッセイ集。日常で感じながらも見過ごして、そのままにしてしまう小さな指のささくれ
 (のようなもの)に気づき、それを逆剝けにしながら言葉にしてくれる詩人。

145◇三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」☆☆☆☆
 刺繍作家として日々家にこもる女、興味の向くことしかやらない女、バリバリの社会人
 ながらも何故かトラブルの多い女、カワイイを武器にしながらしたたかに生きる女。
 オバケ屋敷と噂される古い洋館(開かずの扉と謎の使用人付き)に住む女たちの
 穏やかながら時々訪れる奇想天外な事などなど。

146◇青崎有吾「ノッキンオン・ロックドドア」☆☆☆☆
 不可解専門の探偵と、不可能専門の探偵が営む探偵社。

147◇青崎有吾「体育館の殺人」☆☆☆
 風ヶ丘学園シリーズ1作目。常に人の目があった体育館で起きた密室殺人事件。
 憧れの先輩にかかった嫌疑を晴らすべく、主人公・柚乃は学校一の天才かつ変人の
 裏染先輩に事件の謎を解くべく依頼を出す(報酬は十万円)。
 
148◇青崎有吾「水族館の殺人」☆☆☆
 風ヶ丘学園シリーズ2作目。学園のすぐ近くにある小規模な水族館で起きた殺人事件。
 一作目の働きから警察の非公認アドバイザーとして報酬を得るようになった裏染先輩と
 なぜか世話係として動員される柚乃。前作の登場人物や設定などが頻繁に出てくるため
 (ネタバレすらある)時系列でもあるのでシリーズ順に読むほうがいい。

149◇青崎有吾「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」☆☆☆
 風ヶ丘学園シリーズ3作目。良い味出してる脇役キャラメインの短編集。

150◇青崎有吾「図書館の殺人」☆☆☆
 風ヶ丘学園シリーズ4作目。学園の近所にある図書館で起きた密室殺人事件。
 動機がちょっと納得しかねる部分あり。

  • 最終更新:2016-08-31 14:59:31

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