2016年読了本一覧-3

2016.6

151◇山白朝子「私のサイクロプス」☆☆☆☆
 方向音痴な美形旅本作家と、出資元&お目付役の少女、荷物持ちのダメ男。
 彼らが旅行のたびに迷い込む怪異とグロと暴力とおとぎ話の世界。

152◇小林朋道「鳥取環境大学の森の人間動物行動学シリーズ」8
 「先生、ワラジムシが取っ組み合いのケンカをしています!」☆☆☆

153◇上橋菜穂子「虚空の旅人」(再読)☆☆☆☆
 守り人シリーズ4作目。チャグムの南国への旅編。

154◇大崎梢「スクープのたまご」☆☆☆
 大手出版社で新人研修中の主人公。絶対ヤダ!!と思っていた男性向け週刊誌に配属され
 毎日へとへとになる日々。しかし、下世話な内容で事実にもないことをねつ造してると思い
 きや、ゴシップと誹られようと正確な裏付け作業に手を惜しまない同僚たちの地道な
 記者魂を感じ取り、どんどん職場になじみ成長していく。

155◇伊吹有喜「今はちょっと、ついてないだけ」☆☆☆☆
 バブル期にネイチャーカメラマンとして一世を風靡したものの、借金を肩代わりして
 没落したカメラマン。バラエティ番組脚本家としてのしあがったものの干された脚本家。
 唐突に職を失い,呆然とする不惑の世代の連作短編集。一発逆転はないけれど、人生を
 続けていくことに自信が持てる一冊。

156・157◇上橋菜穂子「神の守り人 上・下」(再読)☆☆☆☆
 守り人シリーズ5作目。山奥の洞窟でたまたま行き会った兄妹を助けたバルサ。彼らは
 生涯にわたり監視された一族で……。

158◇西加奈子「まにまに」☆☆
 エッセイ集。

159◇福田和代「天空の救命室」☆☆☆
 自衛隊の特殊派遣医師で、自覚なくトラブルが寄ってくるタイプの主人公。続編ないかな。
 
160◇山下貴光「筆跡はお見とおし」☆☆
 筆跡だけで、性格判断はもとより、事件解決までしてしまう探偵登場!なんかぬるい。

161◇内山純「土曜はカフェ・チボリで」☆☆☆
 美しい庭園の奥にひっそりと(土曜のみ)開店しているカフェ、そこはデンマーク風の
 こだわりが詰まった美味しく豪華、でも雰囲気の良いスペースだった。ふとしたことから
 その店のいきつけになった主人公は、訪れるたびに不思議な日常の謎に出会う。

162◇梶尾真治「杏奈は春待岬に」☆☆
 クロノス・ジョウンターシリーズ。祖父母の暮らす町に滞在中、偶然見つけた桜の見事な
 洋館。そこには目を疑うような美少女・杏奈がいた。桜の咲く数日間しか現れない少女
 に心を奪われた主人公は生涯をかけて彼女を救い出そうと決意し、実行する。全く理屈の
 分からない未来の装置の修理と、年々開く彼女との年齢差。待ちわびる気持ちは半端ない。
 月日は流れ、桜の時期のある日、物語は結末に向けて進み始める。ここまでは☆4。
 主人公と同じ時間だけ想い続けて結晶までなそうと思ったひとに対する考えが理解できず
 大幅評価ダウン。純愛とロマンに生きる男だけが尊いわけじゃない。

163◇山口恵以子「おばちゃん街道」☆☆☆
 デビューからのエッセイ集。作者のバックグラウンドをほぼ知らずに作品に接するため
 前職が食堂のおばちゃんでも貴族でも十代でも四十代デビューでも、ことさら卑下して
 周りが書き立てる事じゃないのでは?と思ってしまう。机に向かってウンウン唸るより
 働いた苦労談を持ってるほうがよっぽど作品に厚みがでる。
 でも、デビュー作「月下上海」を手に取ったけども、三分の一くらいで「この人の作品は
 私には向かないな」と判断。読みやすく設定もわかりやすく次の展開に向けての布石が散り
 ばめられているいい作風で万人向けだけど、なんか…まぁ…いいか〜と思えて投了。

164◇村上春樹「ラオスにいったい何があるというんだい?」☆☆
 旅のエッセイ集。

165◇竹吉優輔「レミングスの夏」☆☆☆☆
 最愛の人を不条理に奪われたら、誰もが考えてしまう犯人に対する復讐。家族の絆が薄い
 少年が第二の家族と慕っていた母子が喪われたことから、長い長い復讐計画を積み上げる。
 同じく母子を慕っていた少年少女達とともに、犯人を追い詰めるために、警察や市や
 マスコミまで相手取った一大誘拐劇の幕が開く。

166◇畠中恵「明治・金色キタン」☆☆
167◇畠中恵「明治・妖モダン」☆☆
 江戸から明治に変わり、近代化西洋化していく日本。しかし暗闇や人に紛れて妖怪たちは
 しっかと存在しており…。

168◇藤野恵美「初恋料理教室」☆☆☆☆
 京都の路地の奥でひっそり開かれている料理教室、男性限定に惹かれて集まった四人の
 男性が料理を通して今までになかった楽しみや興味に目覚めてゆく。お腹のすく一冊。

169◇古谷田奈月「星の民のクリスマス」☆☆☆
 歴史小説家の父が娘のために書いた絵本。孤独と純粋さからその絵本の世界に入り込んで
 しまった娘と、娘を捜し存在のうろんな影となって絵本に入った父、絵本の世界なのに
 争いの歴史すらある生々しい日々を生きる人々。サンタクロースの存在と贈り物とは何か?
 外国児童文学が好きな方なんだろうなと思わせる言葉選び、でも読み手は馴染みがない
 場合もある。ずっと読んでると疲れる文で、ストーリーは面白いけど一気読みできず。

170◇青柳碧人「国語、算数、理科、誘拐」☆☆☆
 小中学生向け対面式学習塾で講師を務める大学生の主人公達。卒塾生でもある彼らは
 連帯感を持って講師のアルバイトを楽しんでいた。しかし、塾生が連続で誘拐され、
 身代金の受け渡し役に指定されたことから、誘拐事件に巻き込まれてしまう。
 伏線は緩く、ドキドキしながらも気楽に読める一冊。

171◇藤野恵美「ふたりの文化祭」☆☆☆
 何でもできちゃうイケメン男子生徒と、図書館の隅で本に没頭する三つ編みメガネの
 図書委員。好きじゃなかった今までの自分と決別する文化祭となる。

172◇小田雅久仁「本にだって雄と雌があります」☆☆☆☆
 「本棚の本の位置を絶対に変えてはならない」本だらけの祖父の家には禁忌があった。
 前半は愉快な一家の家族アルバムみたいなダラダラとしたエピソードが続くが、後半
 祖父の人生のくだりから話の濃度が急に濃くなる。合わない人は数Pで投げ出すと思うが
 紙の本好きなら、中盤まで流し読みでもいいので、読んでみて欲しい。

173◇伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」☆☆☆
 ギャングシリーズ3作目。久々の銀行強盗後、タチの悪い雑誌記者に目を付けられた
 四人。違法カジノでの借金をチャラにしろという無理難題を解決しなければ正体が
 ばれてしまうかも!? 話が繋がっているのでシリーズ順で読もう。

174◇香月日輪「僕とおじいちゃんと魔法の塔 5」☆☆☆
 魔法の塔シリーズ5作目。幽霊の祖父と魔法の塔で生活している高校生の僕。
 庭を掘り返し年間計画を立てて家庭菜園に精を出し、友達の釣った魚を悪戦苦闘して
 さばき食事を作る毎日。何でも指一本で出来ちゃう魔法の塔で「自分らしくあること」
 を目指している主人公の姿がこの作品の魅力。

175◇和ヶ原聡司「はたらく魔王さま 2」☆☆☆
 異世界・日本の生活も板についた魔王さま。前巻のいざこざで居候が一人増えたり
 (さらなる家計圧迫!)、ボロアパートの隣室に和服の美少女が超してきたり、目の前
 にライバル店が出来たことから売上戦争が勃発したり!

176◇松尾由美「煙とサクランボ」☆☆☆
 ビルの地下にあるひっそりとしたバー、その客席には煙草をくゆらせ、静かに他の客の
 話に耳を傾ける素敵な紳士の幽霊・炭津がいる。道ばたで炭津に助けられ、このバーに
 来るようになった晴奈は、幼い頃に起きた謎の放火事件について相談を持ちかける…。

177◇茅田砂胡「天使たちの課外授業 3」☆☆☆☆
 サブタイトル「テオの日替り料理店」。馴染みの喫茶店の主人から、社会体験学習の
 働き先が決まっていなかったら知り合いの店を手伝ってくれないかと頼まれたリィ達。
 妻に先立たれやる気を無くした天才料理人テオ(無愛想)の才能を十全にプロデュース
 しつつ、いつものように巻き起こるトラブルを片手間に解決する。

178◇七瀬晶「こころ 不思議な転校生」☆☆
 転校時の挨拶「わたしは友達を作る気はありません」によりクラスで浮きまくっている
 美少女こころ。仲間外れにされたくない一心で気の合わないグループに属している絆は
 こころの事が気になって仕方がない。遠足先の山で土砂崩れに巻き込まれたことから
 絆はこころの、ある不思議な能力を告げられる。大人が楽しむより、中高生向け作品。

179◇萩尾望都「思い出を切り抜くとき」☆☆
 短編と自伝エッセイ含む。

180◇茅田砂胡「コーラル城の平穏な日々」☆☆☆☆
 デルフィ二ア戦記番外編。本編の幕間のちょっとした事件など。

181◇山田彩人「眼鏡屋は消えた」☆☆
 頭痛と共に目覚めると8年間の記憶が消えていた……。学校で起きた事件を元にした
 オリジナル脚本の問題作を演劇上演しようとした日から8年間の記憶がないあたしは、
 なんと母校で先生になっていた。消えた記憶と親友の死の謎を突き止めようと、苦手
 だが惹かれて仕方のない同級生に調査を依頼する。あたし(主人公)のテンションが
 話を引っ張ってる面もあるけど、少々ピント外れにも感じる。この結末にするならば
 調査依頼を出した同級生にも一つエピソードを荷担してほしかった。

182◇山下貴光「うどんの時間」☆☆☆☆
 家業を継ぐ予定だった弟の突然の事故死で、東京での売れない音楽活動に見切りをつけ
 実家に戻った主人公。ついケンカ腰になるうどん職人の父と、母代わりに父と店を支え
 ているおばさん、父のうどんに惚れ込んで弟子になった女性職人。素直に店を継ぐ決断
 もできず居心地の悪い日々を送っていた…。

183◇似鳥鶏「迫りくる自分」☆☆☆
 電車で見かけた男は自分と声まで瓜二つ。二度目に出会い、飲みにいって分かったのは
 人間性が最悪なことだった。気分悪く酔い潰れてから数日後、同僚宅に押し入った罪で
 警察がやってきた。逃走劇ものがお好きならオススメ。

184◇畠中恵「えどさがし」☆☆☆☆
 文庫オリジナル。しゃばげ以前の、兄さん二人の放浪エピソード収録。「妖モダン」
 シリーズに繋がる布石もあり。

185◇若竹七海「暗い越流」☆☆☆
 雑誌編集者にまつわる中短編集。最近寡作だったこともあり久々に読んだけど、こんな
 シンプルな展開を書く作家さんだったのだな。

186◇風野真知雄「歌川国芳 猫づくし」☆☆☆☆
 江戸時代の画家の生活と商業絵を描く・作るということ。もちろんフィクションとしても
 作品をこんな目で見ると楽しいと気づかせてくれる。絵の知識が少しでもないと興味が
 持てないかも?

187◇倉知淳「片桐大三郎とXYZの悲劇」☆☆☆☆
 日本の大衆ナンバーワン大スター片桐大三郎の専属付き人となった主人公。病気で耳が
 不自由になり俳優は引退したものの精力の有り余るスターは、何と警察から委託を受け
 特別捜査官として近所で起きた事件にクビを突っ込める権限を持っていた。一冊を使った
 壮大な伏線もあるので気持ちよく騙されましょう。

188◇朝井まかて「先生のお庭番」☆☆☆☆
 みそっかす庭師として、鬼と恐れられる長崎の出島・シーボルト邸で働く事になった
 熊吉。見たこともない植物の世話に追われながら、シーボルトや奥様、召使いの黒人青年
 や普段出会うこともない同世代の蘭学者との交流が描かれる。展開が早すぎて削った部分
 も多そうで非常に勿体ない一冊。

189◇有川浩「シアター! 2」☆☆☆☆
 劇団員キャラ目線のエピソードも絡め、貧乏劇団シアターフラッグの借金返済の日々は
 続く、シアターシリーズ2作目。作者持ち味のラブ要素も盛りっと増えています。

190◇小嶋陽太郎「気障でけっこうです」☆☆☆
 気分転換に雨の中の散歩に出かけた女子高生のキヨ子は、公園に埋められている七三分
 のサラリーマンに遭遇する。助けた方がいいよな…と思ってスコップを取りに戻ったら
 豪快に車に轢かれる展開に。満身創痍で病院で目覚めたら、枕元にはサラリーマンの
 幽霊がいて……。キーになる友人の動きが奇策すぎるのと、主人公は男子高校生にした
 ほうが友情感も増して良かった気がする。

191◇石持浅海「フライ・バイ・ワイヤ」☆☆☆☆
 病床から出られない患者のため開発された遠距離操作ロボット。試験体第一号として
 エリート高校の特進クラスに転校してきたロボットを巡り、思いがけない殺人事件が
 起こる。

192・193◇宮部みゆき「悲嘆の門 上・下」☆☆☆☆
 街中のブラックスポットとして恐れられている塔のような廃ビル、その屋上にある
 化け物の像が動いた……という怪情報がある。消えた同僚を捜す正義感の強い青年と、
 引退した老刑事はそれぞれの立場からビルの謎を解くために、とある存在に出会う…。
 ダークファンタジー「英雄の書」シリーズ2作目。

194◇瀬尾まいこ「僕らのごはんは明日で待ってる」☆☆☆
 家族を大事にするあまり独特の感性を持って生きる彼女と、彼女に惹かれて仕方ない
 僕。ジャンクフードでも好きな人と食べればごちそう的恋愛小説。

195◇三上延「ビブリオ古書店の事件手帳 6」☆☆☆
 袋とじ初版本をめぐる古書好きたちの迷走。本は好きだけど、蒐集に興味はないので
 理解しがたい部分も多い。
 
(8月)

196◇麻見和史「ヴェサリウスの柩」☆☆☆
 医大生の解剖実習中、献体の腹部から発見された脅迫状入りの小さいチューブ。そこ
 には主人公が人格者と慕い、恩師と仰ぐ教授たちの罪を告発する内容だった…。
 
197◇竹本健治「狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役」☆☆
 憧れの先輩・類子にいいところを見せたい地味系主人公・海人は、学園内で起きた
 謎だらけの事件にクビを突っ込むがことごとく推理を外す始末。そしてそういう時に
 必ず現れるのが、鋭利な頭脳を持った高校生棋士・牧場智久だった。

198◇茅田砂胡「レディ・ガンナー外伝 そして四人は東へ向かう」☆☆☆☆
 4人の用心棒たちの出会い、種族を超えた恋の行方、辺境の獅子と大鷲の事件、宝飾
 デザイナーと水牛の友情など、周りのキャラクターを描く番外編。

199◇和ヶ原聡司「はたらく魔王さま 3」☆☆☆
 バイトに汗水流し働きがいを感じいきいきする魔王さまの前に、突如異世界ゲートが
 開く!現れたのは魔王を「パパ」、勇者を「ママ」と呼ぶ、愛らしい小さな幼女!?
 男所帯での育児に悪戦苦闘しながら、幼女を狙う天界の刺客とも戦うハメに!

200◇香月日輪「ねこまたのおばばと物の怪たち」☆☆☆
 父の再婚後、家族ともぎくしゃくし、小学校でもうまく立ち振る舞いができずいじめ
 られ、心がどんどん狭くなっていた主人公・舞子。幽霊が出るという神社に夜一人で
 行けと命令され、泣きながら鳥居をくぐったところ……目の前に見えたのは穏やかで
 明るい風景と、物の怪たちが集まるねこまたのおばばの家だった。

201◇西尾維新「人類最強の初恋」☆☆
 戯言シリーズ・スピンオフ?人類最強の請負人・哀川潤シリーズ開幕。宇宙規模の
 請負仕事と、彼女目がけて落ち、東京を破壊した隕石の理由とは!?

202◇乾ルカ「メグル」☆☆☆
 「あなたは行くべきよ、断らないでね」。大学の隅にある奨学係(アルバイト斡旋)
 を訪れた学生達に、望みもしない仕事を唐突に押しつける謎の女性職員がいる。
 疑問に思いながら仕事先に行くと、そこには学生達の人生を変える出来事が待って
 いた。言葉選びなのか展開なのか、この作者の作品は常にどこか肌触りの悪い印象。
 話に引き込まれても、どこかで心がザラッとして必ず集中力が途切れる。

203◇向井湘吾「お任せ!数学屋さん」☆☆☆☆
 数学嫌いの主人公・遙の隣の席に座った転校生は、どんな悩みも数学の力で解決する
 「数学屋」を学校内で開店させ、クラス中からドン引かれていた。隣席のよしみで
 ハラハラしながらなりゆきを見守っていた遙だったが、次第に数学の楽しさと数学屋
 と彼の魅力に惹かれだし…。

204◇多崎礼「神殺しの救世主」☆☆☆☆
 世界を占う予言者の兄を殺され、最後の予言に沿って救世主を探す旅に出た主人公。
 四人の従者と出会い、世界を救うという異形の羽をもつ存在とも出会うのだが…。
 昭和50年代少女マンガ風のSF要素あり。

205◇村上春樹「サラダ好きのライオン」☆☆☆☆
 村上ラヂオ3。

206◇海堂尊「玉村警部補の災難」☆☆☆
 桜宮サーガ番外編。毎回脇役に徹する警察メンバーの話。

207◇梶尾真治「ダブルトーン」☆☆☆☆
 朝起きるたび、違う人生を生きている……? 生活環境も年齢も違う二人の女性の
 生活が交互に描かれる不思議な展開。一人の男性をキーに、とある結末が浮き彫りに
 なったことから、お互いの情報を結びあわせ、Xーday回避に向けて動き出す…!

208◇松尾由美「わたしのリミット」☆☆☆
 由緒ある旧家の、わたしの家には「開かずの扉」がある。ある日、父が「一ヶ月留守
 にする。開かずの扉にいる少女の正体は聞かず、病院に連れて行って欲しい」とだけ
 書き残し失踪する。少女との一ヶ月だけの同居生活、その結末はあまりにも切ない。
 
209◇小川一水「美森まんじゃしろのサオリさん」☆☆☆☆
 ド田舎にある祖父母の家を管理しながら、山あいの集落で何でも屋を開業した主人公。
 農作業の手伝い、家の修理から、なんと探偵助手まで頼まれてしまう!寂れゆく美森
 を愛し、厄介ごとにクビを突っ込む無鉄砲なサオリさんは、迷惑だけど、かわいい。

210◇太田忠司「夜想曲」☆☆☆☆
 「レストア」続編。オルゴール修理職人の主人公は、妻のおかげで少しずつだが対人
 恐怖症を克服しつつあった。安定した気持ちで修理に打ち込みたいが、増えてきた
 知り合い達から見過ごせないトラブルが次次と持ち込まれ……。

211◇竹内真「イン・ザ・ルーツ」☆☆☆☆☆
 戦後のどさくさに紛れてミュージシャンとして成功した破天荒な性格の祖父。その
 好奇心旺盛な性格は隔世遺伝で三人の孫に受け継がれていた。お年玉ついでに
 祖父が蒐集していた大量の根付けを一人ひとつだけ選んでいいと言われた孫達、
 その根付けには謎があるから解明してみやがれと言い残しラスベガスに向かった
 祖父は飛行機事故にあい、消息を絶つ。三人の孫達が成長しながら、根付について
 知識を深めるうちに、根付けの価値だけでない「家族のルーツ」にたどり着く。

212◇松崎友利「代書屋ミクラ すごろく巡礼」☆☆☆
 代書屋ミクラ2作目、だけど、代書屋関係ないような? ミクラが今恋をしているのは
 天然系ぽやーん美女の助教授。田舎の祭りのフィールドワークに行くと書き置きが
 あったものの、方向音痴の助教授が心配かつ会いたさ見たさのあまり、愛車を質に
 入れて現地に飛んだ。ミクラは「あがったものはしあわせになる」という奇怪な
 巡礼マラソンに恋の成就を賭けて参戦することになるが…?

213◇沢村凜「猫が足りない」☆☆☆
 就職浪人の主人公は近所にあるスポーツクラブに入り浸り、奥様たちの雑談の輪で
 談笑しながらも、心は就職先のない焦りに満ちていた。そんな鬱屈をとある主婦に
 見つかったことから、近所で疑われている猫虐待犯捜しの助っ人に駆り出される。

214◇大倉崇裕「問題物件」☆☆☆
 病弱な社長ジュニアの介添え職についた主人公、しかしそれにつけこんだ反社長派
 から、失敗したらジュニア失脚にもなりかねない厄介な仕事を次次押しつけられる。
 しかし、そんな窮地になると現れる謎のヒーローがいるのだった!?
 
215◇美奈川護「キーパーズ 碧山動物園日誌」☆☆☆☆
 少年は動物園で出会ったアムールヒョウ・ガイアに恋をした。猛勉強と運に恵まれ
 ガイアのいる動物園で飼育員になったものの、寿命の近いガイアの死が受け入れ
 られず異動願いをしたためていた…。しかし見かけは小学生みたいに小柄な売店
 アルバイトの少女から、ある能力があると教えられ……。

216◇風野真知雄「猫鳴小路のおそろし屋」☆☆
 京都の路地の奥の奥にある、知る人ぞ知る骨董店。そこには曰くのある品々が
 思いもかけない理由と共に集まってくるのだった。

217◇篠田真由美「黄昏に佇む君は」☆☆☆
 建築探偵シリーズの神代教授メインの番外編。養家での居心地悪さと進路への悩みを
 抱える神代青年は偶然、洗礼者ヨハネと見まごうばかりの魅力を称えた青年と出会う。

218◇米澤穂信「王とサーカス」☆☆☆☆☆
 ジャーナリスト太刀洗シリーズ2作目。独立後、旅行ルポの下調べついでにカトマンズ
 を訪れた太刀洗。現地の少年に地元ならではの情報をもらいながら、休暇も兼ねて
 ゆっくりしようとした矢先、王子が王と家族を銃撃するという王族殺害事件が発生。
 ジャーナリストとして取材を始めるが、情報提供者の不審死と文化とカースト制の壁、
 会社という後ろ盾もなく異国でたった一人で、何を考え、日本に伝えるべきなのか。
 文中で語られる「王とサーカス」に喩えられる「自分に降りかかることのない惨劇は、
 この上もなく刺激的な娯楽だ」は否定できず。

(9月)

219◇山田ズーニー「人とつながる表現教室。」☆
 エピソードも身近な事が多くて、読みやすく親しみやすい内容だけど、人生の言い訳?
 みたいな印象がぬぐいきれない。

220◇向井湘吾「リケイ文芸同盟」☆☆☆
 理系編集者の主人公が、畑違いの分野・文芸部に移籍。曖昧な数字や表現で濁される
 編集方針に信念を持って立ち向かい、理系思考だからできる切り口で、ミリオンセラー
 目指して苦悩する。

221〜224◇多崎礼「八百万の神に問う 全4巻」☆☆☆☆☆
 苦しみのない楽土を天辺に、一から七の里に分かれた世界。そこには争いを言葉のみで
 解決する音導師という英雄・名誉職があった。ある事件をきっかけに隠遁していた伝説
 のシン音導師の復帰となる「春」、社会に絶望した少年の心を広げる「夏」、他国の
 侵攻の噂が届き里に変化が訪れ始める「秋」、そしてまさに言葉のみで世界を救う「冬」。
 4巻を季節ごとに表現しているが、実質1〜4巻なので春から読もう。

225◇大倉崇裕「天使の棲む部屋 問題物件2」☆☆☆
 犯罪の真偽が裁かれる部屋、水があふれる部屋、鳩屋敷、etc…相変わらず無理難題が
 てんこもりの問題物件シリーズ。犬頭の豪快な破壊っぷりをついつい期待してしまう。

226◇福田和代「碧空のカノン」☆☆☆
 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート。有川浩さんの自衛隊モノ好きならオススメ。

227◇又吉直樹「火花」☆☆
 若手というカテゴリも過ぎようとしている売れない芸人が主人公、師と仰ぐ先輩芸人
 (やはり売れてない)と、漫才とは何か、笑いとは何かという掴みきれないもどかしさ
 を描く小説。表現する苦しさと快感を知ってる人には響くのかも。

228◇加藤実秋「ロケットスカイ インディゴの夜6」☆☆☆
 文庫オリジナル。相変わらずトラブルだらけのホストクラブ、ノリ第一のホスト達と
 経営者である晶にも思わぬ決断の時が訪れる。

229◇向井湘吾「かまえ!ぼくたち剣士会」☆☆☆
 体格差のハンデを抱え剣道を諦めた主人公の少年。しかし少年にもう一度剣を握らせ
 たのは、埋めがたいハンデを持つ隻腕の少年の言葉だった。剣道×数学思考で、性格も、
 剣道に打ち込む理由もバラバラ、でも味のあるメンバーで全国を目指す。

230◇北山猛邦「人魚姫 探偵グリムの手稿」☆☆☆☆
 貧乏なアンデルセン少年は、父の形見の品を探す最中、飄々とした画家グリムに出会う。
 そして二人は、泡になって消えた妹にかけられた王子殺害の容疑を晴らすべく地上に
 やってきた人魚と出会う。童話「人魚姫」を舞台にしたミステリ。

231◇坂木司「和菓子のアン」☆☆☆☆
 デパ地下の和菓子店でバイトを始めたぽっちゃり系主人公・杏子。一見まともだが
 性格が個性的な上司・同僚とともに楽しく働く毎日。しかし時々、和菓子にまつわる
 謎をもったお客さんたちが訪れて…?これぞ日常の謎という趣の作品。

232◇原田マハ「でーれーガールズ」☆☆
 漫画家として大成し母校講演会に招かれ、30年ぶりに高校生時代を過ごした街・
 岡山にやってきた主人公。そこにいたのはケンカ別れしたと思っていた親友の姿だった。
 どこまでも自分に甘く、恋に恋した青春時代の会話は、こっぱずかしくてたまらない。
 友情を謳うならこのラストはひどくないか。

233◇友井羊「ボランティアバスで行こう!」☆☆☆☆
 日帰り災害ボランティアバスツアーに参加したメンバーの理由はさまざま。善意の
 つもりが偽善やネタと誹られ、現地の人々との衝突すらある。それでも誰かのために
 何かをしたい気持ちは湧き出てくるもので…。ラストの心地よいどんでん返しと共に
 ボランティアについても考えさせられる一冊。

234◇福田和代「群青のカノン」☆☆☆
 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート・2。臨時の沖縄出張やサブキャラ目線の短編など。

235◇菅原和也「ブラッド・アンド・チョコレート」☆☆
 近所の兄ちゃんから頼まれ、新興宗教の総本山に「ニセ超能力者」として潜入する
 ことになった主人公。教祖と崇められ閉じ込められている幼なじみの少女と再会するも
 何と殺人事件に遭遇。謎が解けなければ生け贄で犯人として出頭することに…!

236◇山本弘「UFOはもう来ない」☆☆☆
 捏造も日常茶飯事のオカルト番組D&祖父の跡を継いでUFO博物館の管理をするちゃき
 ちゃきの美女、新興宗教の教祖&盲信している少女。そして好奇心いっぱいの少年たちの
 前に落ちてきたのはホンモノの異星人だった!!
 
237◇川上弘美「大きな鳥にさらわれないように」☆☆
 いつかわからない世界に住む人間と「母たち」。とてもぼんやりしたSF設定。

238◇友井羊「さえこ照ラス」☆☆☆☆
 沖縄にある法テラス(弁護士や司法書士などの専門家に依頼したいが、経済的に余裕が
 ない人を支援する組織)に最近赴任してきた若手敏腕弁護士・沙英子。彼女の部下兼
 沖縄文化と方言の通訳役となる大城、仕事はできるが無口の事務員とともに、沖縄独特の
 文化圏でおこるトラブルに向き合う。沖縄ご当地メニューを味わう食事シーンも多く、
 飯テロ本でもある。

239◇若竹七海「ポリス猫DCの事件簿」☆☆☆
 神奈川県の辺境の街「葉崎市シリーズ」7作目。市内の海にある猫だらけののんきな島
 通称「猫島」の臨時派出所巡査・七瀬とポリス猫DCシリーズとしては2作目。できれば
 通して読む方が登場人物の絡みでニヤッとできるかも。猫メインの観光地ならではの
 事件と、コージーミステリの心地よさが詰まった一冊。DCはDetective Cat(探偵猫)。

240◇坪田信貴「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」
 文庫特別版  ☆☆☆
 略称「ビリギャル」。タイトルが全てを説明してる。塾講師だからできる指導方法だけど
 基礎知識すらない状態から教え導くところが興味深い。

241◇青柳碧人「浜村渚の計算ノート」☆☆☆
 天才数学者が「数学の地位向上のため国民全員を人質とする」テロ活動を開始した!彼が
 作り日本中で使われていた教育ソフトには、このテロのための予備催眠が仕込まれており
 指示一つで加害者にも被害者にもなるという。テロに対抗するために警視庁が白羽の矢を
 立てたのは、ぽよーんとした女子中学生・浜村渚だった。数学ミステリといいつつも難しくも
 堅苦しくもなく、さらっと読める(けど結構な被害者数が出ている……)。

242・243◇向井湘吾「お任せ!数学屋さん 2・3」☆☆☆
 アメリカと日本に離れ、恋人になったのかもあやふやな関係ながら、数学という一点で
 繋がりあう遙と宙。数学屋・代理店長としてもちこまれる様々な悩みとともに、数学の
 美しさと、宙が「数学で世界を救う」と決意した過去と、そして二人の未来も語られる。

244◇秋吉理香子「放課後に死者は戻る」☆☆☆☆
 崖から転落し瀕死ながら病院で目覚めた僕は、全く知らない男の身体の中にいた……。
 記憶の齟齬を抱えながら、自分を殺した犯人を捜すべく本来の自分がいたクラスに転入し
 今までは接したことのないクラスメイトとふれあううちに、事件の経緯が明らかとなる。

245◇小路幸也「ストレンジャー・イン・パラダイス」☆☆
 過疎に悩む村の住民誘致を進める女性と、誘致によってやってきた人々の物語。安定の
 読みやすすぎる展開と結末。好きな作家さんだけど、もうすこし濃度を求めます。

246◇山田彩人「幽霊もしらない」☆☆☆☆
 「眼鏡屋は消えた」続編、探偵・戸川シリーズ2作目。就職浪人となった俺が偶然手にした
 夭折した天才ミュージシャンの歌詞集。そこには何とそのミュージシャンが幽霊となって
 取り憑いていた!?夜も昼もなく耳元で「あたしを殺した犯人を見つけて!」と怒鳴られる
 日々に音をあげ、助けを求めた相手は探偵・戸川だった。

(10月)

247◇川上弘美「このあたりの人たち」☆☆
 ちょっとずつ現実ではない登場人物が織りなす、ゆめうつつの川上ワールド。

248◇廣嶋玲子「妖怪の子預かります」☆☆☆☆
 養父の仕事の待ち時間、腹立ち紛れに森の奥にあった謎のタマゴを割ってしまった主人公の
 少年。そのタマゴは妖怪界の保母さんにあたる重要な妖怪だったため、うむを言わさず妖怪
 裁判所にひったてられ、弁護の余地もなく有罪!ひどい牢屋に閉じ込められるかと怯えたが
 刑罰は「妖怪の子を代わりに預かって面倒をみること」。自分の気持ちも持てあますような
 幼いこころの主人公だが、養父とその友人、さらに謎の兎妖怪の手も借りながらじょじょに
 誰かを守ることの大切さに目覚めてゆく。

2016.10.05〜

249◇水野敬也「神様に一番近い動物」☆
 古今東西、動物を作品に使ったものの悪ノリパロディ、としか読めず。

250◇秋吉理香子「暗黒女子」☆☆
 学園一のマドンナとして君臨してきた女生徒の死。女生徒が主催していた読書サークルの
 残る5人のメンバーそれぞれが死の真相を小説にし朗読していくのだが…。アンティークな
 家具調度品に囲まれた部屋で光源はロウソクのみという雰囲気ばっちりな仕掛けのうえで
 闇鍋、というのが、どんでんがえしに驚くより、ギャップに笑えてしまってだめだった。

251◇天祢涼「謎解き広報課」☆☆☆
 縁もゆかりもないど田舎の町役場に就職した都会育ちの主人公。郷土愛もやる気もゼロ、
 一年間だけ我慢して勤務して辞職と決め、配属された広報課もイヤイヤ作業をする日々。
 上司から命じられ、やったこともない取材や誌面レイアウトに加え、なぜか舞い込む村の
 謎解きまで担当するハメに…!

252◇太田忠司「伏木商店街の不思議」☆☆☆
 ちょっと不思議な商店街を舞台にした、2Pで一話の読みやすいショートショート。

253◇小嶋陽太郎「火星の話」☆☆☆☆
 クラスで気になる女の子は「わたしは火星人のお姫様で、18歳になったら宇宙船が迎えに
 くるの」と言い続ける不思議ちゃん。もちろんありえないと思いつつも、彼女の話とリンク
 するかのような白昼夢を見る僕は、夜中のグラウンドで火星を見つめ、太鼓ゲームで火星と
 交信をする彼女に恋をしているのだろうか?

254◇椎名誠「台湾ニワトリ島乱入」☆☆☆☆
 総勢数十名で台湾の田舎の一軒家を借りショートステイ(というか乱入)した探検隊。
 絶えずニワトリが鳴く家で食べに食べ、飲みに飲み、釣りに焚き火に好き勝手遊ぶ一行。
 大の大人がのびのびと遊んでるだけの本だけど、読んでるだけで楽しい。

255◇ほしおさなえ「活版印刷三日月堂」☆☆☆☆
 祖父の遺した家と、活版印刷機のある家に移り住んだ女性。懐かしさからふらりと訪れる
 近所の人や、その繋がりを描くあたたかい一冊。

  • 最終更新:2016-11-05 11:33:14

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