2017年読了本一覧-2

2017.07〜
 
111◇小林雄次「ロス・タイム・ライフ」(再読)☆☆☆☆☆
 日常生活中、突然三人の審判団と残り時間のかかれた掲示板が現れ、こう告げられます。
 「あなたの人生のロスタイムは90分です!」。死を告げられたものの呆然とする間もなく
 人生の心残り解消のために走り出す五人の人生の物語。

112◇北國浩二「白般若は語らない」☆☆
 単位のために渋々入った能楽サークル、偏屈な顧問と指導員のイケメン現役能楽師と
 ともにメンバー5人で山形の山村に伝わる十柱能楽見学に訪れた一行は、白般若にまつわる
 殺人事件と、少女の誘拐事件に遭遇する。こんな風習が伝わる一家なんて潰れてしまえ。 

113・114◇村上春樹「神の子どもたちはみな踊る」「東京奇譚集」(再読)☆☆☆☆

115〜117◇青柳碧人「朧月市役所妖怪課 全3巻」☆☆☆
 優秀な公務員であった父の姿に憧れ、晴れて公務員となり配属されたのは、戦後の西洋化に
 ともなう妖怪封じのために造られた都市・朧月市。市中に現れる妖怪トラブルを解決する
 妖怪課に配属されたものの、検討も付かない業務に右往左往。さらに面倒なことに、妖怪
 退治業者まで参戦し、市の妖怪対策の抜本的解決まで求められる!

118◇石持浅海「耳をふさいで夜を走る」☆なし
 自分が面倒を見続けてきた三人の女性を、気づいた義務として殺さねばならない。完璧な
 殺害計画をたてつつ夜を走る主人公。途中まで理由も全く明かされず、殺害シーンが
 延々続く展開に辟易。この作者だから最後まで…と思ったけど、残念な読了感。

119◇森沢明夫「虹の岬の喫茶店」☆☆☆
 わかりにくい森の小路を抜けた小さな岬の先端にある、老婦人が営む喫茶店。心のこもった
 一杯のコーヒーと、お客の心に届く一曲をセレクトしてくれる。幸せなことばかりでは
 ないけれど小さく笑顔になれる一冊。

120◇伊坂幸太郎「ジャイロスコープ」☆☆☆
 田舎のスーパーの片隅にある「相談屋」、荒野を爆走するトラックに襲いかかる謎の生物、
 バスジャック事件の「もし、あの時こうしていれば…」。独特のユーモアと収束するオチ
 だけでなく実験的なストーリーも含んだ短編集。

121◇「お師匠さま、整いました」☆☆
 数学者だった夫の跡を継ぎ、寺子屋の女師匠になった桃。親を亡くし学舎を求めて上京した
 梅と、数学勉学大好きなおしゃまで可愛い鈴、二人の教え子と衝突しながら、自身の今後
 について思いふける。主人公・桃が、こんなに意地になる気持ちがよくわからない。

122◇恩田陸「錆びた太陽」☆☆☆☆
 原発の暴走で人間が住めない土地になり、おまけにゾンビ化した人間が徘徊する世界に
 なってしまった東京〜東日本。長い間、唯一そこで作業を続けていたのは、同じ顔をした
 7体のヒューマノイドだけだった。ところが何の連絡もなく税務署のしたっぱと名乗る
 若い女性が車を飛ばして乗り込んできた。設定は重いが、本としては読みやすい。

123・124◇竹内真「図書室のキリギリス」(再読)「図書室のピーナッツ」☆☆☆
 なんちゃって司書シリーズ。失職を機に、高校の図書室の司書として働きだした主人公。
 30歳も近づくなか、勉強も資格をとることにも怠けていた自分に落ち込みつつも
 高校生たちの素直な姿にはげまされ、制約も多く予算もない図書室を充実したものに
 しようと奔走する、大人の青春ストーリー。

125◇廣嶋玲子「青の王」☆☆☆☆
 少年が、枯れ果てた砂漠の井戸の底から偶然迷い込んだ青い宮殿、そこには何もかも忘れて
 閉じ込められている一人の少女がいた。執拗においかけてくる魔物や王の部下たちを
 ふりきり、少年と少女は、青の王のほんとうの姿を見つけることはできるのだろうか。
 
126◇松崎有理「5まで数える」☆☆☆☆
 世界中の人間のために自らを実験台にして新ワクチンを見つようとする学者の苦悩、
 インチキ霊媒師などのトリックをあばく疑似科学バスターズ2作。鎖で繋がれた6人の
 少年たちによる砂漠の逃走劇、そしてある秘密が暴かれないよう過ごす少年の前に
 現れた天才数学者の幽霊。理系文学短編集。疑似科学バスターズの1作目のみが残念。

127◇垣谷美雨「農ガール、農ライフ」☆☆☆
 派遣切りされるわ、恋人からは別れを切り出され部屋から追い出されるわ、貯金も
 家族の助けもないわの、ないない尽くしの崖っぷちアラサー女子の主人公。テレビで
 偶然見た自給自足の生活に天恵を得て、知識ゼロから農業生活につっこんでいくものの
 予想外の壁だらけで??

128◇田丸雅智「ショートショート・BAR」☆☆
 星新一の流れをくむ、正統派ショートショート。オチは納得するものの、記憶には
 残らないタイプの読みやすさ。

129◇西條奈加「みやこさわぎ お蔦さんの神楽坂日記3」☆☆☆
 ハイカラな街・神楽坂で起こるちょっとした事件を、きっぷのいい元芸者・お蔦さん
 がズバズバと解決する粋な人情シリーズ3作目。飯テロ本でもある。

130◇宮下奈都「羊と鋼の森」☆☆☆
 ふとしたことから調律師の世界に飛び込んだ主人公、天才的な先輩と世間ずれした
 同僚と、自分が追い求める音の差に迷い失敗しながらも諦めない姿を描く静かな一冊。

131◇柴田よしき「さまよえる古道具屋の物語」☆☆
 ある日突然目の前に現れる寂れた古道具屋、そこで買わされた古道具により、4組の
 家族の人生が一転する。なんかストーリー構成がちぐはぐで読みにくい。

2017.8〜

132◇篠田真由美「一角獣の繭 建築探偵 桜井京介の事件簿」☆☆☆
 シリーズ本編13作目。前作から出てきた明確な敵との対決と、隔絶された避暑地での
 蒼の初恋。前作12作目「聖女の塔」からシリーズ最後まで内容や登場人物が入り乱れる
 ので出来れば揃えてから読むべし。

133◇篠田真由美「黒影の館 建築探偵 桜井京介の事件簿」☆☆☆
 シリーズ本編14作目。とうとう明かされる、神代教授との出会いを含む京介の過去編。

134◇篠田真由美「燔祭の丘 建築探偵 桜井京介の事件簿」☆☆☆☆
 シリーズ本編15作目&完結編。わずかな手がかりを元に、姿を消した京介を捜し歩く
 蒼と深春。狂気に満ちた久遠家の正体と、京介の帰る場所は……?よくこんなに設定が
 盛れるものだと感心。全作長編でこってりしたシリーズのため半端に手を出しにくいが、
 ハズレと思った作品は一つもなく、読む時間をとる価値はある。

135◇篠田真由美「さくらゆき 桜井京介returns」☆☆☆
 シリーズ第二部?returnsシリーズ1作目。本編から十数年後、それぞれの道で生きる登場
 人物のその後も分かる短編集。建築探偵という縛りが消えたせいか読みやすくなってる。
 年月を経て丸くなった三人の代わりに、トラブル巻き込まれ型ヒロイン・庄司ゆき登場。

136◇篠田真由美「屍の園 桜井京介episodo 0」☆☆
 シリーズ本編の派生?隔絶された学園でひっそり生きていたころの京介が解き明かした
 謎の転落事件。

137◇篠田真由美「誰がカインを殺したか 桜井京介returns」☆☆☆
 シリーズ第二部?returnsシリーズ2作目。短編集。新しい学校で出会う友達との交遊と
 裏切り、しかし今の庄司ゆきのそばにはいつも優しく見守る京介の存在があり…。

138◇山田彩人「今宵、喫茶店メリエスで上映会を」☆☆☆
 パワハラ上司を殴り飛ばして仕事を辞め、大叔母の遺品整理のために幼い頃に少しだけ
 暮らした古い商店街のある街にやってきた亜樹。週末の映画上映が楽しみで入り浸って
 いた喫茶店メリエスの惨状を目にしたことから、負けず嫌いのスイッチが入り、商店街
 復活に向けて走り出す。

139◇青柳碧人「西川麻子は地理が好き。」☆☆☆
 「国語・数学・理科・誘拐」からの学習塾シリーズスピンオフ。地理をこよなく愛す
 西川麻子が恋人の刑事から国旗にまつわる相談を受けたことから、犯罪地理顧問!?
 としていろいろな事件の謎を解く。

140◇柴田よしき「あおぞら町 春子さんの冒険と推理」☆☆☆
 イマイチ活躍のチャンスに恵まれないプロ野球選手の妻・春子。自分にできるのは
 夫の心身管理と家を守ることだと思い定め、日々を暮らしている。ある日、偶然、
 丹精され美しく咲いている花の鉢をゴミ捨て場に持って来た男性の姿に違和感を覚え…?
 日常の謎部分と、(他作品では書ききれなかった)プロ野球選手を支える人々を描き
 たい気持ちが半々な印象。

141◇宮内悠介「月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿」☆
 天才少年棋士がいつか対戦したいと思い通い詰めている、引退した棋士であり最高の
 碁盤師・吉井利仙。碁盤を作る人・使う人・芸術品と扱う人、そして商いで儲ける人。
 ミステリ成分もあるけど、それ以外のドラマを読む本。

142◇似鳥鶏「一〇一教室」☆☆☆
 教育界のカリスマが経営している全寮制の恭心学園。突出した進学率はもちろん、
 入学すれば、ひきこもりや問題児も更正するという。……そんな場所が天国であるはず
 もなく、学生たちは寝てる間も気が抜けない恐ろしい生活を送っていた。内容の九割
 近くは救いようのない場面なので、学生生活にトラウマのある人は避けた方がよい一冊。

143◇佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」☆☆☆☆
 深夜ラジオの投稿職人だった昔を隠して深夜のコンビニで働く主人公。しかし一番
 好きな趣味を封印する生活は灰色だった。そんなある日、センスのない服装でコンビニ
 に居座る少女が、同時期にしのぎを削っていた投稿職人だと予想をつける。実際にあった
 ラジオ番組とがっぷり四つに組んだ作品。

144◇西條奈加「無花果の実のなるころに お蔦さんの神楽坂日記1」(再読)☆☆☆
 ハイカラな街・神楽坂で起こるちょっとした事件を、きっぷのいい元芸者・お蔦さん
 がズバズバと解決する粋な人情シリーズ1作目。忘れていたので再読。

145◇朝井まかて「御松茸騒動」☆☆☆
 自分はできる子と確信し華々しい出世を夢見ていた主人公は、行動が鼻についた同僚
 たちの陰謀によりド田舎の松茸番に左遷されてしまう…。落ち込みながらも、低迷する
 松茸生産量改善のため、裾をからげて山々をしらみつぶしに歩き出す。

146◇森絵都「出会いなおし」☆☆☆☆
 「年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ」。
 様々な理由で会えなくなった人に再び会うこと、昔諦めた思いにもう一度直面すること、
 別れたから全部終了ではなく、近くにいなかったからこそ思う気持ちに気づかされる。

147◇恩田陸「終わりなき夜に生まれつく」☆☆
 「夜の底は柔らかな幻」のキャラクターの過去を書いた作品。

148◇大崎梢「本バスめぐりん。」☆☆☆
 早期退職し、友人の後釜として、移動図書館バスの運転手に再就職した壮年の主人公。
 畑違いの転職に戸惑いながらも、誰かに本を届けるという仕事と、人が集まるという事、
 そして、ふと起きる小さな事件を楽しみ始める。

149◇穂村弘「野良猫を尊敬した日」☆☆☆☆
 しょうもない思考のぐるぐると共に暮らすエッセイ。言葉にできない隙間みたいな
 もやっとした思いを書かせたら天下一品。

150◇近藤七恵「シャルロットの憂鬱」☆☆☆☆
 引退した元警察犬・ジャーマンシェパードのシャルロットと暮らし始めた主人公夫婦。
 しつけが行き届いて賢い大型犬ながら、甘えん坊なところが魅力となり、周辺の犬の
 飼い主達にも大人気。しかし、人の集まるところには謎も舞い込んでくるもので?

151◇原田ひ香「ラジオ・ガガガ」☆☆☆☆
 「人生で大切なことは、すべて深夜のラジオが教えてくれた」。実在したラジオ番組に
 耳を傾け、深夜たった一人で聞いて考えることがどれだけ心の栄養になったのだろう。
 著者自身がラジオドラマ作家の経歴があるとのことで、ラジオドラマの脚本づくりに
 苦心するあまり、博打として別名でコンテストに応募する作品は、焦燥感がもの凄い。

152◇桂望実「僕とおじさんの朝ごはん」☆☆☆
 どれだけ見栄え良く手を抜くかだけ考え、料理なんて仕事と割り切るパーティーケータ
 リング業の「おじさん」。腰のリハビリ中に出会った「僕」のためにお弁当を作り出し
 たことから、生きることと食事に向かい合い始める。

153〜157◇瀬川貴次「ばけもの好む中将 1〜5」☆☆☆
 鬼や妖怪とともに暮らした平安時代。名門貴族でイケメンながらも、出世や色恋よりも
 ばけもの探しが三度の飯より大好き!という残念男子・宣能。出世のため?にばけもの
 探しに随行し始めた小心ものの主人公・宗孝は、毎回こわい話を聞かされて涙目になる。
 さらに、揃いも揃って個性派の12人の姉にふりまわされる宗孝の日々に安息はない。

158・159◇佐藤正午「鳩の撃退法 上・下」☆☆☆☆
 書けなくなり忘れられた作家が主人公。ドーナツショップで偶然であった男、死ぬ寸前
 まで主人公の作家復帰を願ってある遺産を残した老人、デリへル女優倶楽部の女たち。
 上巻はほぼ伏線で、明確にされない時間軸と、複数の事件が理解できるまでは読むのが
 少し大変かも。主人公の判断力&生き方と女性遍歴がダメすぎてイライラする部分も
 多々あるけれど、どんどん読めてしまう独自の筆力に感服。昔の作品も再読してみよう。

160◇長嶋有「もう生まれたくない」☆☆☆
 この作者の、連続性のある断片を重ねていく三人称多元描写は好きで魅力的なのだけど
 誰が語ってるんだっけ?の状況を理解するのに結構時間がかかるデメリットもある。
 肌で感じる時事ネタもあるので、世代によっては全然共感できないかも。読むなら早めに。

161◇川上弘美「赤いゾンビ、青いゾンビ」☆☆☆
 エッセイ東京日記シリーズ。「なるなら赤いゾンビと青いゾンビ、どっちがいい?」
 って聞かれたら、もの凄く困る。

162◇原田ひ香「三人屋」☆☆
 仲の良くない三人姉妹が商店街に開いた、時間ごとに異なる飲食店。朝の喫茶店は
 若くて笑顔の眩しい三女、昼のうどん屋はバツイチの次女が職人的にきりもりし、
 長女は夜のスナックで適当ながらうまいごはんを作る。ごはん小説ではないかな。

163◇深緑野分「分かれ道ノストラダムス」☆☆☆
 死んだ元クラスメイト(恋人未満)男子の遺品ノート、そこには「こうしていたら家族
 は死ななかったかもしれない」後悔が書きつらねられていた。彼の死をトレースする
 うちに主人公の少女はノストラダムスによる世紀末騒動に巻き込まれてしまう。

2017.9〜

164◇秋川滝美「居酒屋ぼったくり 4」☆☆☆
 商店街のオアシスとして常連客も新規客もくつろげるぼったくり。商店街の端に
 新規ショッピングセンターオープンの噂が駆け巡り、みんながそわそわする4巻。

165◇福田和代「薫風のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート 3」☆☆☆
 1〜2作目のキャラクター話もあるし、ネタばれもあるので注意。年下のライバルも
 現れ、各地の航空自衛隊音楽隊員をやきもきさせた主人公に恋の自覚は訪れるのか!?

166◇白河三兎「計略結婚」☆☆
 魅力のせいで引き寄せられる各種トラブルに対応するため性格にトゲを生やし毒舌冴え
 渡る孤高の存在となった絶世の美女・静香。静香の船上結婚パーティーで同じテーブル
 についた静香の友人、元彼氏、数あわせの代理参列者…彼らから語られるエピソードは
 果たしてどういう結末につながるのか。

167◇澤田瞳子「師走の扶持 京都鷹ヶ峰御薬園日録2」☆☆☆
 養家でもある京都の御薬園でテキパキ働く主人公・真葛。そろそろ嫁ぎ遅れ限界とみた
 義姉から持ち込まれた見合い話に、過剰なほど反発してしまう。

168◇夏川草介「本を守ろうとする猫の話」☆☆☆
 古書店経営の祖父が急逝し、面識すらない叔母に引き取られる話は進むものの、呆然と
 ひきこもる高校生の僕。引っ越しの期限も迫るなか、唯一の居場所である古書店に
 スルリと入ってきたのは何と喋る虎猫だった!

169◇梨沙「鍵屋甘味処改 5」 ☆☆☆
 シリーズ5作目。サブタイトル・野良猫少女の卒業とあるように完結。冷え切った父子
 関係をなんとかしようと奔走したり、卒業後の進路が明らかになる大団円。

170◇廣嶋玲子「妖の子あずかります 3 妖たちの四季」☆☆☆☆
 1・2作目を踏まえた短編集。千弥の過去が明かされたり、あの遊び人が恋に落ちたり。

171◇阿川佐和子「魔女のスープ 残るは食欲2」☆☆☆
 食にまつわるエッセイ集。飯テロ本。

172◇山本弘「僕の光輝く世界」☆☆☆
 橋の欄干から突き落とされ川に落ちた高校生の主人公、病院で目が覚めたものの、脳の
 損傷により、見えているものと違う世界が認識されるようになっていた。その視野の
 誤差を十全に活かした著者初のミステリ作品。

173◇川上弘美「ぼくの死体をよろしくたのむ」☆☆☆
 アン子と修三ちゃんも出てくるので「クウネル」掲載の短編シリーズ三冊目?と思われ
 るけど個別で読んでも問題なさそう。何度でもぼんやり読めるのがよい。

174◇知念実希人「黒猫の小夜曲」☆☆☆
 道案内シリーズ2作目。地上の迷える魂を導くすばらしい存在(っぽい)「道案内」。
 2作目ではなんと小さな黒猫の姿で地上勤務をするハメになったエリート道案内が
 光臨そうそうに出会った迷える魂は、様々な思惑が絡まった未練に縛られていた。

175◇坂井希久子「ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや」☆☆☆☆
 職人まがいの副業で貧乏な実家の武家を支える只次郎は、思いがけないトラブルで
 途方にくれていた。最後の食事とも思い詰めてくぐった暖簾の先で出会ったのは、
 未亡人美人女将・お妙と、彼女の作る心のこもった料理、そして細やかな洞察力で
 解き明かされる謎の数々だった。のんびり気を抜いて読める時代小説。

176◇市川哲也「屋上の名探偵」☆☆☆
 「名探偵の証明」蜜柑花子の高校生時代。すでに推理力は花開き、学校生活の謎解き
 で有名になっていたものの、同級生からの嫉妬まみれの批判にさらされ心が折れていた。
 推理なんかしないと黙り込む蜜柑花子は、(方向は若干おかしいが)すがすがしい
 ほどまっすぐな少年と出会い、少しずつ自分の役目に向き合い出す。

177◇廣嶋玲子「送り人の娘」☆☆☆☆
 魂を黄泉に送る力を持つ送り人の跡継ぎとしてすくすく育つ少女・伊予。一方的に
 虐殺された妖狼を助けようとして無意識に蘇りの技を会得してしまったことにより、
 因縁の暴君・猛日王に狙われてしまう。
 
178◇冲方丁「冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場」☆☆☆
 2015年8月のDVによる逮捕報道。現在まで真相は不明ながらもDV自体は完全な濡れ衣。
 映画化などで作者が急に有名になったことから、民事でお金を騙し取る?目的で妻側に
 入れ知恵した存在があったもよう。警察に幻滅できる一冊。

179◇三崎亜紀「メビウス・ファクトリー」☆☆☆☆
 壁に囲まれた小さな町の町民全てが従事する企業・ME創建。そこでは日本中で使われ
 るマシン・P1が心を込めて作られていた…。現代社会の不条理が詰め込まれ、奇妙な
 寓話として、静かに密やかに崩壊していく長編。

180◇坂井希久子「虹猫喫茶店」☆☆☆
 平凡の塊のような大学生の主人公が偶然みつけた喫茶店のバイト。そこには偏屈な
 美人店主と美青年、そして主義主張は違えど、猫好きな人々が集まる場所だった。

181◇本多孝好「dele」☆☆☆☆
 依頼人の死亡とともにパソコンとスマホの見られたくないデータを消去する会社で
 働き始めた主人公。依頼人の死亡確認のために使いっ走りにさせられながらも、
 一人のひと、もしくは自分が持ち続けるデータ・情報とは何か、と想いを馳せる。

182◇似鳥鶏「100億人のヨリコさん」☆☆
 貧乏極まり、魔窟と噂される大学のおんぼろ学生寮に入らざるをえなくなった主人公。
 奇人変人だらけの住人+謎の美女幽霊?ヨリコさんに気に入られたことから、全世界を
 崩壊させるパニックが始まる。理屈も最後もこれで納得でいいのかな?

2017.10〜

183◇梶尾真治「デイ・トリッパー」☆☆☆
 最愛の夫を病気で亡くした主人公。明らかに憔悴してみえるほど、悲しみから抜け出せ
 ない彼女の前に「もう一度あいたい人に合わせてあげる…」という奇妙な申し出が。
 科学者であった祖父の遺品という時間移動装置「デイ・トリッパー」で過去に飛んだ
 主人公は、もう一度出会えた愛しい人を失わない未来を作ろうと動き出す。

184◇秋川滝美「居酒屋ぼったくり 5」☆☆☆☆
 商店街の敵と思われた大型ショッピングセンター問題解決と、当人同士より周りがソワ
 ソワしまくっていたラブコメ部分もクライマックス。相変わらず飯&酒テロ本。

185◇秋川滝美「幸腹な百貨店」☆☆
 郊外大型ショッピングモールに押され赤字経営の続く老舗百貨店が舞台。上層部からは
 閉店という単語がちらほら出る崖っぷちを打開すべく、敏腕営業部長とカリスマ店員、
 そして反りが合わないと思いこんでいた新人・アルバイト店員たちや地元の商店街とも
 タッグを組み、町全体を盛り上げようとする勢いを作ろうと奮闘する。

186◇知念実希人「あなたのための誘拐」☆☆☆
 あと一歩まで迫ったのに力不足で解決できなかった誘拐殺人事件と、それに伴い家庭を
 壊したことを機に退職した刑事。しかし、過去の事件と同一犯と思われる誘拐事件が
 再び勃発。犯人から名指しで事件への参加を強制された元刑事は、雪辱を果たすために
 単身で犯人に立ち向かっていくのだが…。

187◇坂井希久子「ふんわり穴子天 居酒屋ぜんや 2」☆☆☆☆
 ほんわかと心のこもった料理と、身分も気にせずくつろげる居酒屋ぜんや。事件解決を
 機に様々な人々が集うようになり、自然とおかしな噂話も集まってくる。

188◇椙本孝思「へたれ探偵 観察日記」☆☆☆
 超のつく虚弱体質+マイナス思考ながらも探偵を営む(営まされる?)主人公・柔井。
 面倒をみるといいつつ本気でどつきまくるドS美人心理士を助手に、奈良の都で巻き
 おこる珍事件に日本一弱々しいへたれ探偵がビクビクと立ち向かう(時々逃げる)。

189◇茅田砂胡「トゥルークの海賊2」☆☆☆
 伝説の大海賊団を騙るニセモノに怒り心頭の怪獣夫婦、一方、独自の僧社会を形成する
 惑星トゥルークでは大いなる闇=ルゥに会わせろと大騒動が起きていた。

190◇原田マハ「まぐだら屋のマリア」☆☆☆☆
 一流料亭で修行中だった主人公は、濁りきった経営陣の考えによる食品偽装事件発覚
 により、料理人のプライドと夢、そして可愛い後輩と憧れていた女性すべてを失った。
 所持金も無く、バスの終点「尽果」という地に降り立ち、死に場所を探すべく崖っぷち
 に建つ小屋にたどりつく……しかしそこは主人公が理想とも思う場所、心が喜ぶ料理を
 作る素朴な定食屋だった。

191◇飯田譲治・梓河人「ミステリークレイフィッシュ」☆
 嵐の海原にだよう豪華なヨット、そこにはある犯罪をするべく集まった匿名の男女6人
 がいた。そして、ふとしたことから疑心暗鬼に陥り血みどろの争いをくりひろげる展開に。

192・193◇田牧大和「鯖猫長屋ふしぎ草紙 1・2」☆☆☆☆
 おんぼろで幽霊がでる噂もある、とある江戸の貧乏長屋。そこには長屋の守り猫と呼ば
 れる雄の三毛猫・サバという名物猫がいる。その飼い主(猫しか描かない絵師でもあり、
 ちょっとワケありの過去持ち)はサバに顎で使われる毎日を楽しんでもいた。しかし、
 何か秘密を抱えていそうな妙齢の女性が越してきたことから、飼い主が長年待ち続けて
 いた「犯人」探しが始まった。1巻はストリー仕立てだが、2巻はのんびり系。
 
194◇田牧大和「甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺」☆☆☆☆☆
 菓子作りの名人と謳われた父の死に呆然とする暇もなく、叔父の策略により店とレシピ、
 そして跡継ぎの座を奪われた兄弟。もう一人の父とも頼る、のれん分けした職人の店に
 世話になりながら、「叔父をギャフンと言わし、いつかは店舗奪還」と暗い執念を燃やす
 営業担当の弟と、美味しい菓子が作れれば幸せと思ってしまう職人の兄。叔父の営業妨害
 に悩まされながらも、兄弟を心配し応援してくれる人々とのご縁で難問を解決していく。

195◇石持浅海「鎮憎師」☆☆
 仲の良い大学サークル内で起きた心中未遂事件。それから数年後、仲間内の結婚式を機に
 サークルメンバーが集まり、事件は過去のものとし、再び交流を始めようという矢先に
 マドンナの立場ともいえる女性が殺害された…。この複雑にいりくんだ事件を解決した
 のは犯人探しをする探偵や刑事でなく、無用な憎しみを鎮め関係者の誤解を解く役割・
 鎮憎師(ちんぞうし)と呼ばれる人物だった。設定は面白いんだけど、混乱目的で引き
 延ばしたような箇所もあり、興味が薄れ読み飽きて何度も中断。

196◇阿川佐和子「サワコの朝」☆☆
 対談番組「サワコの朝」の書籍版。読みやすくかる〜い雑談集。

197◇逸木裕「少女は夜を綴らない」☆☆☆
 小学生時代のトラウマで常に「自分が誰かを傷つけるのではないかという妄想」から
 抜け出せない主人公。身近な人の殺害方法をノートに書き出す対処療法を密かに続けて
 いたが、ある日、トラウマの鍵を握る少年から「ばらされたくなければ自分の父を殺す
 手伝いをしてくれ」と脅迫を受ける…。

198◇よしもとばなな「さきちゃんたちの夜」☆☆☆☆
 普段の生活でふと出会うキラキラして泣きたくなるくらいきれいなシーン、こころの
 動きなどを描いた短編集。女性の感性がさらに極端になりスピリチュアル感が更に増加。
 舞台は違えど、脇役の置き方や主人公の考え方がほぼ全部一緒なのがいいのか悪いのか。

199◇坂井希久子「恋するあずさ号」☆☆
 過酷な看護の現場に疲れ、なんとなくつきあってきた彼氏からも距離をおきたくて、
 特急あずさ号に飛び乗った主人公。偶然おりたった諏訪湖で出会った陶芸家の紹介で、
 高遠のおだやかな風景と新たな出会いに癒されてゆく…。主人公目線で見ると
 これからステキな人生始まるよひゃっほーエンドだが、冷静な大人の目で読むと、
 熱を入れるあまり訪問介護先でカラ回りして家庭崩壊寸前のアドバイスをしたり、
 結婚前提でつきあってる彼氏を悪者扱いしたり、優しくしてくれる人にリスクも
 考えず頼ったり。眺めてる分にはいいけど、この主人公とは友達になりたくない。

200◇七瀬晶「瓜ふたつ」☆☆
 遊郭に売られ、初めての客を取る年齢になってしまった少女は、幼い頃にした少年との
 かすかな約束だけを頼りに鉄壁の遊郭から脱出を図る。奇しくも同日、望まない嫁入りが
 イヤで芝居見物を口実に家出を企む少女とすれ違い、引き離されていた二人の少女の
 運命が交差する。羽振りのいい人と都合よく出会いすぎ、平民代表の少年が不憫である。

201◇大山淳子「原之内菊子の憂鬱なインタビュー」☆☆☆
 仕事の要領も悪くおかめのような容貌もあいまって陰気で内気な菊子、しかし彼女は
 目が合った人からとめどなく話しかけられるという妙な能力を持っていた。彼女の力に
 目をつけた弱小編集会社は、その能力を活かしインタビュアーとして採用するのだが…。

202◇仁木英之「立川忍びより」☆☆☆
 ブラック企業をやっとの思いで辞職し、実家の中華料理屋に戻ったものの、なんと父の
 借金のカタに忍者一家に婿入り修行?をさせられることになった主人公。広い日本家屋に
 仕掛けられた罠をかいくぐり、大蛙が化けた乗用車に乗り、ワガママ一家のおさんどんに
 あけくれる中、嫁(仮)がアイドルデビューする大騒動に巻き込まれる。

203◇麻宮ゆり子「敬語で旅する四人の男」☆☆☆
 辛うじて縁が繋がるなんとなくしか知り合いじゃない四人で行くことになった四つの旅。
 お互いが気にはなるし心配だけど、一歩踏み込めない距離感が面白い。

204◇輪渡颯介「溝猫長屋 祠之怪」☆☆
 猫だらけの長屋の奥にある小さな祠、そこには長屋のこども達を見守る少女がいるという。
 だが、今年の祠当番になったわんぱく四人組には例年の比じゃない試練が待っていた。

2017.11〜

205◇木本雅彦「星の舞台からみてる」☆☆☆
 バディと呼ばれる仮想世界のAIと共にいるのが当然になった世界、依頼人の死亡をうけ
 バディを含めオンライン上のデータなどを消去する会社に勤める主人公。いつも通り消去
 作業を進めようとした主人公の前に、死んだはずの依頼人からのオンタイムメールが届き、
 幾つかの不思議な作業を指示してきた。

206◇瀬那和章「雪には雪のなりたい白さがある」☆☆☆
 実在の四つの公園を舞台にした四つの物語。やりたいことがあるのに踏み出せない背中を
 必要な時にそっと支え、一歩を踏み出すために押してくれる温かい物語。

207◇麻宮ゆり子「仏像ぐるりの人びと」☆☆☆
 主人公の雪嶋はものごころ付いた時から仏像が大好きだった。進路と受験の鬱々状態での
 不注意による交通事故により二年間を棒に振り、自分と仏像の縁なんてもうないのだと
 思った時、目に飛び込んできたのが「求)仏像修復アルバイト」のチラシだった。

208◇廣嶋玲子「半妖の子」☆☆☆
 妖怪の子預かりますシリーズ4作目。妖怪だけでなく人間社会でも少しづつ知り合いが
 増えてきた弥彦。そんな弥彦の元に、鬱屈を抱えことあるごとに家出を繰り返す問題児の
 半妖の少女が長期予定で預けられることになり…。幼稚園のトラブルを眺めてる印象。

209◇小路幸也「花咲小路三丁目のナイト」☆☆☆
 花咲小路商店街シリーズ3作目。夜の営業しかしていないおんぼろ喫茶店を営む叔父の
 もとに居候中の僕。飄々とした叔父のもとには何故か相談事が多く寄せられ、常に快刀
 乱麻の解決方法が見つかるのだ。しかし商店街二代目たちのお悩みは多岐多様で??

210◇井口和泉「料理家ハンターガール奮闘記」☆☆☆
 フランス留学中にジビエの奥深さにはまったものの、日本では全く浸透していない事に
 疑問をもった作者は、自ら狩猟免許を取り、山に住むいきものの命に向かい合う。

211◇仁木英之「千夜と一夜の物語」☆
 姉・一夜の働く研究所へ縁故採用で入所した妹・千夜。歓迎会の席で深酔いした千夜は
 帰宅途中に不気味な館へ攫われ、謎の主に「千夜にしか話せない話」をしなければ
 即座に殺すと脅される。作者はこの作品を書き上げた満足感があるのだろうか?

212◇三好昌子「京の縁結び 縁見屋の娘」☆☆☆☆
 「縁見屋の娘は祟り付き。男児を産まず26で死ぬ」。縁見屋四代目の娘・お輪は、この
 悪縁を背負っていた。ふらりと現れた謎の美形修験者は秘術を使ってこの祟りを払える
 というのだが…秘め事も多く混乱も増すばかり。

213◇福田和代「S&S探偵事務所 最終兵器は女王様」☆☆☆
 S&Sシリーズ2作目だったもよう(1作目は未読)。前職に見切りをつけ相棒とともに
 ネットセキュリティ専門IS探偵事務所を開いたしのぶ。依頼の少なさをなげき、窮地を
 救ったことから事務所のおさんどんになった青年の成長を眺める日々。そんななか、
 情報のなさから捜査も袋小路となっていた相棒スモモの両親失踪事件に、重大な目撃
 証言が…!サブタイトルの意味は最後まで不明。

214◇よしもとばなな「どんぐり姉妹」☆☆
 「私たちはどんぐり姉妹です。なんということもないメールを私たちとやりとりしま
 せんか」。姉どん子・妹ぐり子はボランティアでこんなユニットを営んでいる。
 ほわっとした話でとくに盛りあがりもなくぼんやりした印象。

215◇田牧大和「晴れの日には 藍千堂菓子噺2」☆☆☆☆☆
 叔父とのトラブルも収まり兄弟の店も順調そのもの。目をかけてもらっている武家の
 柏餅作りの手伝いを買って出た兄・晴太郎は、作業場でひときわ手際よく働くワケあり
 子持ち美人の姿に目が釘付けになる。一作目では書ききれなかった兄弟の父母の話や
 親身になってくれるおじさま達の気持ちも盛られて大満足。兄弟を母のように支える
 茂市っあんが大好き。いいシーンがいくつもあって読了後もパラパラ読みかえした。

216・217◇河野裕「つれづれ、北野坂探偵舎 1・2」☆☆☆
 神戸北野坂にあるカフェ「徒然珈琲」2Fには元編集者で幽霊が見える佐々波と、常に
 眠たげな作家の雨坂が営む零細探偵舎がある。彼らは現実の状況を「小説のように
 設定」してまるで物語を創るように議論をし、事件を推理していく。二人が探偵でいる
 理由はただ一つ、「紫色の指をした幽霊」を探し出すことだった。

218◇森博嗣「孤独の価値」☆☆☆
 マスコミが作り上げた「絆」が心の鎖になり、誰かと繋がらなければと思い込む。
 過剰に寂しさを恐れる得体の知れない孤独感を看破する一冊。

219◇平山瑞穂「悪魔と私の微妙な関係」☆
 ヘッドハンティングで転職してきたエリートの部下として引っ張り回され、長年付き
 あってきた彼氏とも結婚秒読み、才能があるのか不明なまま続けているエクソシスト
 のバイトにも何故か強い思い入れがある主人公。この3つの伏線からどうしてここに
 着地するのかという結末。

220◇岡崎琢磨「道然寺さんの双子探偵」☆☆☆
 消えた香典・銘菓と恋・川の向こうの幽霊……おひとよしの若和尚・一海が遭遇する
 ちょっと不思議なできごとを、生意気盛りの双子の兄妹がときほぐす。

221◇小路幸也「風とにわか雨と花」☆☆☆
 小説を書くという理由で離婚し家を出た父。離婚した意味が分からない幼い姉弟と
 腑に落ちないながらも今の生活は悪くないと思えてきた母。そんな家族の夏の一幕。
 字が大きく字間も広い、内容的には短編〜中編くらいのボリューム。

222・223◇ケイト・フォーサイス「魔女メガンの弟子 上・下」☆☆☆
 「エリアナンの魔女」シリーズ開幕編。王妃の反逆で魔女や魔法使い、妖魔たちが
 迫害の対象になった国エリアナン。隠れ谷に住む大魔女メガンと見習いイサボーは
 魔女の試験中に王の軍隊に追われ、互いの使命を抱え、命からがら脱出する。出生の
 秘密に触れたり、新たな仲間との出会いや神獣ドラゴンとの冒険に胸躍る……のは
 大魔女のばーちゃんのほうで、主人公のイサボーはひたすら地味に野山を逃げまわっ
 たあげく結構ひどい目に遭う。

224◇茅田砂胡「天使達の課外授業4 アンヌの野兎」☆☆☆
 シリーズ名を銘打ってるものの、3で登場した料理店家族と怪獣夫婦の番外編。

2017.12〜

225・226◇ケイト・フォーサイス「黒き翼の王 上・下」☆☆☆☆
 「エリアナンの魔女」シリーズ3・4巻。反逆も成功し外法で跡継ぎも授かり
 代理王として頂点にたったラスボス・王妃が予想外の襲撃を受け失墜。
 呪いをかけられた黒き翼をもつ弟王子率いるレジスタンスは、隣国や妖魔の
 襲来にあわてつつも力を蓄えていく。大魔女と主人公の姉は勇ましいのだが
 主人公の少女イサボーは相変わらず地味で損なポジション。

227・228◇ケイト・フォーサイス「薔薇と茨の塔 上・下」☆☆☆☆
 「エリアナンの魔女」シリーズ完結編。広げた伏線は全て収束、しっかり
 読み応えのある世界に満足。巻末なので気づきにくいが、話内の用語リスト
 もあるので大量の部族などを必死に覚えなくてもいいのも良かった。この
 作品で注目したいのが、キャラクターの不完全さ。何百年生きてる大賢者も
 大魔女もしばしば癇癪を起こしたり判断を間違える(そして謝れず拗ねる)
 敵も味方も親も神も完璧な人格設定でないところが斬新。

229◇川上和人「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ」☆☆☆
 タイトルはもちろんツンデレで、鳥が好きで好きでしょうがない作者は、
 断崖絶壁に囲まれた前人未踏の無人島で命がけの研究キャンプをしたり、
 骨格標本のために夜な夜な土を掘り返す。サブカル系のたとえが多いので
 そちらの知識もないと読みにくいかも。

230◇秋川滝美「放課後の厨房男子 まかない飯編」☆☆
 男子校の弱小料理部・包丁部シリーズ3作目。本編は学校・部活でなく、
 卒業した先輩たちと一緒に働くことになったバイト先の喫茶店が舞台。
 さらに腕をあげた先輩のまかない飯に舌鼓をうったり、大穴な恋愛騒動に
 巻き込まれたり。

231◇森博嗣「夢の叶え方を知っていますか?」☆☆☆
 夢があるなら口だけ思うだけにせず、期限を切って一歩一歩選んで進めば
 実現できるからやってみなよと、もの凄く冷静に語られる。

232◇川上弘美「森へいきましょう」☆☆☆
 生まれた時から分岐の始まるパラレルワールド、同じ「ルツ」という女性が
 同じ人と出会いながらも違う関係を築く不思議が描かれる。どの世界でも
 出会うある男性とその破壊的なおかあさまと縁が切り離せないのは恐怖。

233◇小嶋陽太郎「ぼくらはその日まで」☆☆☆
 「ぼくのとなりにきみ」続編。同じ中学校に進学したが相変わらず小学生の
 ままの関係の三人。人を惹きつけるガキ大将気質がクラスの女子にひそやかに
 人気となっている友人に嫉妬まじりの視線を送るインテリ眼鏡タイプの主人公。
 空気を読めない彼女も少しづつ成長がみられ、主人公をさらにやきもきさせる。

234◇五十嵐雄策「ひとり旅の神様」☆☆☆
 仕事もプライベートもぱっとしないOLの主人公がとっさの逃避行でたどりついた
 のは鎌倉のお寺。うっかり壊した祠が縁で出会ったのは「旅の神様」と自称する
 ぐーたらな黒猫・ニャン太だった。

235◇大沼紀子「真夜中のパン屋さん 午前5時の春告鳥」☆☆☆
 シリーズ完結編。ぎこちないながらも様々な家族のかたちで幸せを感じていく。

236◇阿部智里「弥栄の烏」☆☆☆☆
 八咫烏シリーズ完結編。もう後がない里の存続をかけた大猿との最終決戦、里の
 ほんとうの存在意味と大猿と壁の謎、そして全く戻らない記憶に蝕まれる王。判断
 した罪を一人で背負い続けなくてもよい世界へ舵が切れるのだろうか。この完結
 ならば外界(人間界)設定はなくても良かったなーと思う。

237◇青木祐子「これは経費では落ちません!」☆☆
 二作目だったもよう(一作目は未読)。経理課にもちこまれる領収書から垣間
 見える人間関係に、おひとりさま大好きクールな理系OLが巻き込まれる。

238◇榎田ユウリ「ここで死神から残念なお知らせです」☆☆☆
 妙にスタイリッシュな黒服男=死神から、唐突に臨時助手を命じられたひきこもり
 の主人公。死んだことを理解しておらず、死体?のまま生活を続ける人々への説得に
 四苦八苦する。そして、なぜ自分が助手に命じられたかの理由もあかされ…。

239◇田牧大和「鯖猫長屋ふしぎ草紙3」☆☆☆
 シリーズ3作目。江戸人情と不思議な猫・サバの活躍を楽しめるシリーズ。

240◇小路幸也「ラブ・ミー・テンダー」☆☆☆
 シリーズ12作目。過去・我南人と秋実さんの出会い編。一作目から故人で謎の存在
 だった秋実さん、「どよんとしてた時代を明るく照らした存在」という説明を覚え
 ていたけど、昔も変わらず賑やかではという違和感。いい人だからこの人だけには
 事情を…という展開が多すぎて、漏れてないとしてもここの家の秘密主義て紙一重
 だなって思う。

  • 最終更新:2018-02-01 12:27:44

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