2018年読了本一覧-2

(7月)

129◇岡崎琢磨「春待ち雑貨店ぷらんたん」☆☆
 京都の小さなハンドメイド雑貨店には、なぜか首をかしげたくなる少し不思議な
 客が来店する。しかしこの本の謎は解いても「正解だぜドヤァ」と犯人あてを
 楽しむものではない。本のキャラクターではあるが、個人として生きるひとの
 事情や心情に思いを馳せてほしいと言うことだと思う。正答などないしデリケート
 なことだとは思うが、主人公の地雷だらけのスネ加減は正直面倒。

130◇齋藤孝「雑談力が上がる話し方」☆☆☆
 ごもっともだが、そううまくいかない。

131◇冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」☆☆☆☆
 三々五々、廃病院に集まる子どもたち。12人集まったらすぐ安楽死できる予定
 …しかし、自殺志願者の前に横たわる物言わぬ13人目の死体。この存在を囲み、
 各々主張をくりだし、主催者すら動揺する思いも寄らぬ意見が飛び交う。

132◇田牧大和「散り残る」☆☆☆
 一番弟子だと思っていたのに左遷のように片田舎の薬草園手伝いに任命された
 医師見習い・誠之助。赴任早々、薬草園の娘・早苗にどストライクで一目惚れし
 薬草園もいいじゃんとウキウキしながらも、早苗の動かない右手と用心棒・左近
 の存在が気になって仕方がない。お江戸三角関係恋ものがたり。

133◇木皿泉「さざなみのよる」☆☆☆☆
 富士山の見えるド田舎のコンビニ、その次女・小国ナスミ、享年43歳。良くも
 悪くも人に影響を与えて生きた彼女の死は、家族、友人、知人、短期間の同僚
 の思い出を強く共振させた。NHK正月ドラマ「富士ファミリー」と同設定。
 時々脈絡もない台詞や行動が出てくるのでドラマ↑だと違和感があるのだが、
 小説だと味わい深くてたまらない。

134◇柴田よしき「ねこ町駅前商店街日々だより」☆☆☆
 離婚し都会に疲れ、実家のある寂れた駅前商店街に帰ってきた30台後半の主人公。
 居合わせた縁でつやつやと美しい猫を引き取ったことから、廃線危機にあえぐ
 無人駅の猫駅長や、駅前商店街の復興に関わってゆく。町おこしものは好きで
 アイデアが興味深いのでよく読むけど、この作品に関しては実現成功微妙かと。

135◇畠中恵「おおあたり」☆☆☆
 しゃばげシリーズ。若だんなが三歩進んで二歩下がるレベルで成長してる?

136◇倉知淳「皇帝と拳銃と」☆☆☆
 犯人目線で描くコロンボ系倒叙シリーズ、4作収録。計画的に完璧な犯人vs
 死神のような風貌の刑事&イケメン刑事。犯人目線は読んでて疲れるので
 あまり好きではないが、倉知テイストでぐいぐい読まされた。

137〜139◇大倉崇裕 ☆☆☆☆☆
 「小鳥を愛した容疑者」「蜂に魅かれた容疑者」「ペンギンを愛した容疑者」
 <警視庁いきもの係>1〜3作目。1・3作目は短編。2作目は長編。
 捜査中に大ケガをして一線を外された敏腕刑事は、容疑者拘束中の対応として
 容疑者宅のペットをケアするという謎の部署に回される。相棒は生き物のエキス
 パートすぎて残念女子・薄、二人それぞれの得意分野を組み合わせ謎が解ける
 コミカルながら読み応えある謎解きシリーズ。

140・141◇椎名誠
「あるいて行くとぶつかるんだ」「おなかがすいたハラペコだ 2」☆☆☆
 同じエピソードもあるけど、経験をかみ砕いて書いてあるので単純に面白い。
 
142◇河合莞爾「800年後に会いにいく」☆☆☆
 クリスマスに突然届いた、800年後の未来にいる少女・メイの動画メッセージ。
 スズランを届ける?イタズラ動画?世界滅亡?クリスマスに起きる原発狙いの
 テロとの関係は???混乱しながらも主人公の結論は常に「メイを助ける」と。
 作者の強い考えなのか、東日本大震災後の原発廃止に関する台詞が大変多い。
 
143◇斎藤茂太「あなたと会うとほっとする と言われる人の共通点」☆☆☆
 優しい語り口でさらっと読め、みだしだけ拾っても内容が理解可能。聖人君子に
 なれとは言わない、本能&本音だけで判断せず、大人の品格を持ちなさい、と。
 
144◇小嶋陽太郎「放課後ひとり同盟」☆☆☆☆
 家庭環境に鬱屈を抱え、放課後に空を蹴る少女。性別でくっきりわけられる学校
 生活のはざまでもがく少年(少女)。初恋の同級生にお礼を言えなかったことが
 こじれた青年などを描く青春連作短編集。作者を透過したような文学崩れ人物
 目線作品しか書けないんじゃないかと心配していたので、壁を乗り越えた作品
 が読めて妙に安心した。

145◇七月隆文「ぼくときみの半径にだけ届く魔法」☆☆
 自称写真家の主人公は友人達の活躍を横目にウジウジとしたバイト生活を送って
 いた。ある日、お屋敷の窓辺に立つ美少女・陽を偶然撮影したことから、写真に
 向かい合う考えがかわりだす。仕事と恋と病気の解決が簡単すぎて、砂糖を塊で
 口に突っ込まれているような分かりやすい展開の甘さだった。

146◇碧野圭「書店ガール」☆☆
 老舗書店のカリスマ店員・理子(40代)と、コネ入社の新婚・亜紀(20代)。
 二人の相性はトコトン悪く、他店舗まで噂になるほどだった。しかし、理子の
 店長就任を機に、店に最大の危機が訪れる。中盤過ぎまで二人のいがみあいが
 続き、興味が薄れて何度も中断。「本屋は本のショールーム」のくだりは好き。

147◇似鳥鶏「名探偵誕生」☆☆☆☆
 お隣の千歳お姉ちゃんは名探偵で、僕はずっと敵わない存在だと思っていた。
 しかし、長年受けた探偵のレッスンにより成長した僕は、彼女の危機を救う
 ために考えだす。

148◇カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」☆☆☆
 ノーベル賞作家かつ翻訳物(苦手)。最低減の描写と、意外なほど大量の台詞。
 読者をおいてけぼりにすることのないシンプルな展開でするすると最後まで。
 誰もの記憶が曖昧な世界が舞台。老夫婦が息子のいる村に行くために旅立ち、
 対称的な二人の騎士と鬼に呪われた?少年に出会いながら進む7日間の旅の話。

149◇岡崎琢磨「病弱探偵」☆☆☆
 超健康優良児の僕と超虚弱体質の幼なじみ。お見舞いにもってこいなのは
 僕が学校で遭遇する幾つもの日常の謎だった。

150◇D.D.エヴェレスト「アーチー・グリーンと魔法図書館の謎」☆☆☆
 冒険に憧れる少年に、400年前に預けられた古書が届いた。オクスフォード
 地下にある秘密の図書館に弟子入りしたり、行方不明の父にまつわる謎や
 トラブルに次々巻き込まれる。悪人キャラだけ省いたほぼハリポタ展開、が
 身もフタもない作品解説。
 
(8月)

151◇逸木裕「星空の16進数」☆☆☆☆
 色彩感覚が鋭い藍葉、その根本にあるのは、幼い頃2時間だけ誘拐された時
 に見た鮮やかな壁画の記憶だった。高校を中退し、働き始めた矢先に届いた
 100万円。藍葉は受け渡しのためやってきた探偵に親近感を覚え、とっさに
 「この100万円で自分を誘拐した犯人を探してほしい」と依頼する。

152◇大倉崇裕「琴乃木山荘の不思議事件簿」☆☆☆
 低山登山客の多い山荘を舞台にした日常の謎。

153◇朱野帰子「海に降る」☆☆☆
 父の背を追い、難関の潜水調査船パイロットを目指す美雪に突如襲いかかった
 閉所恐怖症。夢を失いかけた美雪の職場に現れたのは、父の研究を継ぎ
 幻とされた深海生物を探す高峰。それぞれの深海調査の壁にぶつかりながら
 反発し惹かれ会うことで新たな発想を得始める。

154◇高木敦史「演奏しない軽音部と4枚のCD」☆☆☆☆
 叔母が遺した「4枚同時再生が必要なCD」、音楽に詳しくない主人公に
 必要以上の音楽知識を授けたのは、聞く専門軽音楽部員・塔山だった。
 架空言語で歌う曲をめぐる盗作騒動、壊れたギター事件など、音楽にまつ
 わるすこし不思議ですこし苦い4編+ボーナストラック。

155◇河合莞爾「デッドマン」☆☆☆
 都内で次々みつかる切断死体、それはまるで必要な体のパーツを集めて
 一人の人間を蘇らせるかのようだった…。事件を追う刑事と、名前も思い
 出せず身体に違和感を感じリハビリ入院中の「僕」。2つの視線で真相に
 辿りつく。最後までバカミスの疑いがちらついて違う意味でドキドキ。

156・157◇D.D.エヴェレスト「アーチー・グリーンと錬金術師の呪い」
  「アーチー・グリーンと伝説の魔術師」☆☆☆
 シリーズ3作完結。複雑な要素もなくさらりと完結。

158◇太田忠司「ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を」☆☆☆
 シリーズ3作目。

159◇齋藤孝「まねる力」☆☆☆
 どんな仕事もまわりを観察し真似る事から始まる。マニュアルがないと
 動けない人向けの本。

160◇阿川大樹「終電の神様」☆☆☆
 事故で運転を見合わせた夜の満員電車。この運転停止が、それぞれの場所へ
 向かう人々の人生にとって思いがけないターニングポイントになる。

161◇河合莞爾「燃える水」☆☆☆
 リストラ後、謎の高額給で転職した先での仕事はなんとワケあり社員の
 リストラ担当。時期を同じくして起きた事故などを追ううちに、燃える水
 という世界を変える新事業を巡る謎に首をつっこむことになる。

162◇田牧大和「八万遠」☆☆☆
 戦国時代によく似た架空の世界。血筋のため不条理な抑圧を受け続け遂に
 クーデーターを起こした破軍の武士と、富士山の神に護られた穏和な君主。
 糜爛した王朝が終わる節目を生きる二人の物語。どう考えても途中で、早く
 続きを!という終わり方で消化不良。

163◇恒川光太朗「滅びの園」☆☆☆☆
 ぼんやりした世界で穏やかに暮らす男と、謎の白くてぶよぶよした生物の
 襲来で人類が半減し滅亡がけっぷちの地球を巡る長編。こんな不条理な
 理由で死ぬ世界の終わりはイヤだ。

164◇東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」☆☆☆☆
 田舎の雑貨店店主がふとしたことから始めた悩み相談ポストには、素朴な疑問
 ・ひやかし、時には深刻な相談が細々と寄せられ、密かに話題になっていた。
 店主が故人となり、半廃墟になった雑貨店にたまたま逃亡犯三人組が立ち寄った
 その日その時、届くはずのない相談の手紙がひらりと舞い込む。

165◇大倉崇裕「クジャクを愛した容疑者」☆☆☆
 <警視庁いきもの係>4作目。残念系イケメン刑事がメンバー入り。

166◇美奈川護「星降プラネタリウム」☆☆☆
 「日本で一番星が美しい島」という町おこしが成功したせいで、故郷の島が
 心ない観光客に踏みにじられたと感じる青年。鬱屈を抱えながらも新配属先で
 がんばるぞと意気込んだ矢先、全く経験のないプラネタリウム解説員に任命される。
 思ってもない幼なじみとの再会と、星馬鹿に囲まれ少しずつ考えは変わり出す。

167◇三浦しをん「(※タイトル忘れ)」☆☆
 編纂から印刷、特製の箱が作られ実際に店頭に並ぶまでのエッセイ。黒い薄い本。

168◇和ヶ原聡司「働く魔王さま!14」☆☆☆

169◇香月日輪「妖怪アパートの幽雅な日常 9」(再読)☆☆☆☆

170◇森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」(再読)☆☆☆☆
 アニメ映画化を受けて再読。

171◇アンディ・ウィアー「火星の人」☆☆☆☆☆
 火星着陸後の事故で、たった一人火星に残された男。建設初期の火星基地は
 物資も乏しく、水・酸素・食料の備蓄から余命が数えられるほど。しかし
 宇宙一タフな主人公は生きて地球に帰ると決意、知恵とユーモアを持って1つ
 1つ困難を解決し、時には台無しにするようなトラブルにも打ち勝ってゆく。
 脇役に至るまで人物が魅力的、秀逸な宇宙サバイバル小説。

172◇椎名誠「ぼくは眠れない」☆☆
 エッセイで度々不眠についての記述があったが、一番のトラウマの事件を
 読んで納得。本当に悪質で災難だ。

173◇結賀さとる「ダンジョンを経営しています」☆☆☆
 ベルウッドダンジョン株式会社西方支部繁盛記。家業のダンジョン屋を手伝う
 べく大学を卒業して故郷に帰省した次男坊ジェイク。安定操業の実家で見習い
 生活のはずが、新天地の危険な新ダンジョン建設をいきなり担う展開に。
 ファンタジーの世界を借りたお仕事小説。

174◇平谷美樹「江戸城 御掃除之者!」☆☆
 江戸城をぴかぴかにするプロ集団・お庭番。侍の仕事としては馬鹿にされがち
 だが、毎日粛々と掃除に向き合っている主人公の班に、トラブル含みの掃除の
 依頼が次々舞い込んでくる。読みやすいが謎も薄く物足りない印象。

(9月)

175◇蛭田亜紗子「エンディングドレス」☆☆☆☆
 最愛の夫を亡くした悲嘆から抜けきれず、自殺のために身辺整理を始めた主人公。
 首にかけるロープを探しに寄った手芸屋で目に止まったのは「最後の時に着る
 服は自分の手で作ってみませんか?」という講座のお知らせだった。
 
176◇柚木麻子「幹事のアッコちゃん」(再読)☆☆☆☆

177◇阿部智里「烏百花」☆☆☆
 本編の番外編。

178◇稲垣栄洋「世界史を大きく動かした植物」☆☆☆
 トマト、綿、トウガラシ……世界史の事件を、食を軸にしてみた本。

179◇秋川滝美「居酒屋ぼったくり 8」☆☆☆

180◇高殿円「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」☆☆☆
 登場人物を全部性別逆転、さらに舞台を現代にしたホームズもの。
 原作を下敷きにしてる部分も多い。推理成分は薄く、やや強引。

181◇アーサー・C・クラーク「渇きの海」☆☆☆☆
 安定の観光地になった月世界、人気コースの月面遊覧船を楽しむ人々は突如
 何もない砂の中に吸い込まれるように落下した。繋がらない無線・限られた酸素
 ・事情を抱えた22人+2人のクルーたちは無事救出されるのだろうか。

182◇菅野雪虫「ヤレイスーホ」☆☆☆
 「チポロ」続編。父の不審な死後、親戚宅に引き取られ下働きにさせられた少女
 はまっとうな手段では犯人を弾劾できないと諦め、雪山の頂上にいるという
 魔物を探す旅に出る。見つけようとしないものには救いの機会はない。

183◇柿村将彦「隣のずこずこ」☆☆
 女と狸が来たら村は終わると言い伝えられてきた村に、本当に女と狸が訪れ
 「一ヶ月後に全員、狸に飲み込まれて死ぬから」と断言された。
 コミカルなタイトル・表紙・語り口に騙されているが不条理ホラー成分強い。
 複数譚で言い伝えがある→生き残った人は相当いる?面白そうに語った祖父
 の存在含め、色々腑に落ちない。不用意なSNSなどやらない限り、海外逃亡者を
 突き止められる手立てがないので対象村人全員逃亡で解決なのでは。

184◇山口恵以子「愛は味噌汁」☆☆☆
 食堂のおばちゃん3作目、文庫オリジナル。トラブルはあれど安定の人情物。
 時々入る昭和のドラマなどの小ネタは必要?

185◇白河三兎「もしもし、還る」☆☆☆
 目が覚めた主人公は猛烈な太陽の照りつける砂漠に倒れていた。ぽつんと佇む
 電話ボックスで外界と繋がるものの違和感がつきまとう…!?過去と現在が
 複雑に入り組み、真実を悟った主人公が選ぶ行動とは?伏線回収はほころび
 なしだが、配線を組むような味気なさもある。

186◇野田知佑「カヌー犬・ガク」(再読)☆☆☆
 かっこいい大人の男ってこういう人だと思う。

187◇名取佐和子「ペンギン鉄道 なくしもの係」☆☆☆☆
 企業専用とも言える盲腸線、その終点にある遺失物保管所。大事なものを電車
 に忘れた人々はペンギンに導かれるように自らの「なくしもの」を再発見する。
 ペンギンがいる理由も行動も納得。ペンギンで製氷企業…ホシ○キ電機?

188◇佐々涼子「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」☆☆☆
 死の概念が全く違う遠い異国の地で無くなった人はどうなるのか?テロや事故、
 急病で亡くなった家族と、心の区切りをつけるため、最後の思い出が残るように。
 苦労を穏やかな微笑みの裏に隠し、ひそかに奔走する会社と社員たちのノン
 フィクション。慣れるまでは少し読みにくい。

189◇友井羊「向日葵ちゃん追跡する」☆☆☆
 憧れの作家を支援したい一途な思いは、推理能力の高さにより作家を追い詰め
 る結果となり、ストーカーの烙印を押された主人公・向日葵。セキュリティ会社で
 働き始め、若いながらも能力を認められだした矢先、接近禁止対象の作家に
 ばったり出会ってしまう。それも、殺人現場で…。無実を証明したいのか、ただ
 作家に会いたいのか…向日葵は幾重にも悩み続ける。

190・191◇西尾維新「美少年探偵団 1・2」☆☆☆
 幼い頃に見つけた輝く星をもう一度見つけたい、でも期限はあと数日しかない。
 その依頼を叶えよう!と軽く請け負ったのが中学校の奇人変人美少年だらけの
 美少年探偵団の5人だった。美少年がきゃっきゃうふふしてる新シリーズ開幕。

192◇齋藤孝「ストレス知らずの対話術」☆☆
 相手に「伝わらない」「反応がない」…それは内容ではなく技術の問題かも?
 自分が話す側で、聞く側の反応レベルが低い場合、うまいこと反応を引き出す
 ためのテクニック。

193◇周木律「猫又お双と消えた令嬢」☆☆☆
 迷い込んできた野良猫は、実は少女に変化できる猫又。気のあった一人と一匹
 は穏やかな同居生活を楽しんでいた。そんななか、大家に頼まれ、名家令嬢の
 誘拐予告事件の立会人として事件に遭遇する。作品の穏やかな雰囲気は印象が
 いいが、とてもシンプルなトリックで正直物足りない。ミステリ初心者向け。

(10月)

194◇瀬川貴次「闇に歌えば 文化庁特殊文化財課事件ファイル」☆☆
 祖母譲りの霊感を持つ主人公の大学生。引っ越し先の隣室で起きた変死事件が
 気になるものの、付き合い始めたばかりの彼女との大学生活を楽しんでいた。
 時を同じくして金縛りや悪夢に悩まされ、さらには得体のしれないスーツ男達
 が身辺をウロウロ…。彼女は不幸に襲われてしまうのに、主人公が彼女をさく
 っと忘れて、次のヒロインぽい美少女に即目移りしてるのが呆れる。

195◇倉知淳「ドッペルゲンガーの銃」☆☆☆
 おっとり昼行灯まじめ刑事の兄&かけだしミステリ作家の妹シリーズ。白昼
 同時刻に起きた殺人事件とコンビニ強盗、車で30分以上かかる2つの犯行に
 使われた銃が、なんと同じものだった。口八丁手八丁で現場見学し、いざ謎
 解き…正解に至らず唸っている妹の前に、兄のようで兄でない謎の存在が!?
 この作品だけでなく、ここ数年、真面目キャラを下に見て馬鹿にして虐げる
 コンビもの作品が増えている気がする。真面目で出来る人へのうやまい含む、
 全部わかっていてあえてやる「いじり」ならば作品の味でいいけど、単に馬鹿
 にしているのも目に付く。

196◇齋藤孝「語彙力こそが教養である」☆☆☆
 タイトルどおり。自分の言いたいことをそのまま言うより、聞いた相手がオッ
 と思うような言葉を1つでもいれる(自分らしさを何気なく混ぜる・会話の
 きっかけにする)のがかっこいい大人、という内容。

197◇又吉直樹「夜を乗り越える」☆☆☆☆
 書いても書いても漫才が認められない時期、小説家として有名になった時と今、
 幼少期からの読書録など。正直、小説よりこのエッセイのほうが遙かに考え方に
 刺激を受ける。つい読んだことのない本を探してしまうが、気に入った本を
 何度も再読という楽しみ方ももっとしてみよう。

198◇住野よる「君の膵臓をたべたい」☆☆
 インパクトのあるタイトルからすれば、拍子抜けのどストレートな青春病気悲恋
 もの。一番最初にこの作品から読んでいたら、他作品は手をつけていないと思う。

199◇安東みきえ「ゆめみの駅遺失物係」☆☆
 少女がいつもの通学帰りに、ふと思いだす。「あたしが失くしたのは、おはなし
 でした」。おずおずと訪れた「ゆめみの駅」遺失物係、そこには乗客が知らぬ間
 に落としたたくさんのおはなしがファイリングされていた。

200◇アンドリュー・マシューズ「シェイクスピアストーリーズ」☆☆☆☆
 装画:アンジェラ・バレット 7作品を収めた子ども向け翻訳絵本だが、知識の
 ない私が読むには最適だった一冊。登場人物の大半が自分のしたいようにした
 あげくの結末なので、すがすがしく自業自得。

201◇おのりえん「虫のいどころ人のいどころ」☆☆
 田舎に引っ越してきた5人家族、見たこともない植物や虫に毎日驚かされつつも
 生物の不思議に魅入る家族の姿を描いた児童書(でも主人公は主婦)。

202◇冲方丁「破蕾」☆☆☆
 江戸が舞台。成り上がりを目指し、知略とテクニックで男女問わず籠絡するアン
 モラルな女の事件とその破滅、その騒動に期せずして巻き込まれた奥方の華やか
 で隠微な物語。ひらたくいうとエロイ。

203◇梶よう子「ご破算で願いましては」☆☆☆
 みとや・お瑛仕入帖シリーズ1作目。不幸な事故で両親を亡くし、兄と二人で
 (今で言う100円均一のような)小さな店を始めたお瑛。店主ながら気まぐれで、
 道具の仕入れついでにトラブルまで持ち込む兄。戸惑いながらも周りの手を借り
 ちょっとでもいい解決を目指し奮闘するお瑛がけなげ。田牧大和氏の江戸ものと
 よく似ているが、比べると話の厚みが薄い。

204◇椎名誠「旅先のオバケ」☆☆☆
 夜中壁を叩かれたり、無人島で謎の光に道案内されるのもこわいが、命の危機
 レベルでいうと、整備もしてないようなシベリアの飛行機に重量制限無視で定員
 超えて立ち乗りするほうがこわい。

205〜207◇村上春樹「1Q84」全3巻  ☆☆☆☆
 あるはずのない高速道路の避難路を通り、月が2つ浮かぶ、少しだけ違う世界に
 迷い込んだ女。小説家デビューと引換にゴーストライターを引き受けた男。
 はるか昔、一瞬だけふれあった手の絆に導かれ、迷い悩み、魂の片割れを探す物語。
 オウム事件での膨大なインタビューが凝縮・昇華されたような作品。

(11月)

208◇河野裕「サクラダリセット1 猫と幽霊と日曜日の革命」☆☆
 住民の何割かが不思議な能力者である咲良田市。見聞きしたことを忘れない
 高校生ケイと、世界を三日巻き戻せる美空が依頼されたのは、猫を助ける
 という単純な依頼のはずだった…。登場するどの能力も欲しくない。

209◇森博嗣「常識とらわれない100の講義」(再読)☆☆☆☆

210◇蒼井上鷹「あなたの猫、お預かりします」☆☆☆
 恋心から犬を手なずけようとする青年、家賃のために自分の愛猫を誘拐など、
 小心者かつ小悪党な小市民のドタバタを楽しめる連作短編集。

211◇山本幸久「幸福トラベラー」☆☆☆
 冴えない中二男子の主人公が新聞部の取材で訪れた上野公園。偶然出会った
 (憧れの先輩に似た)美少女から「私の写真撮って!」と頼まれ、
 名前も知らない美少女とわずか三時間の上野デートが始まった。
 過去作品のキャラも不自然でない程度にちょこちょこ登場している。

212〜214◇似鳥鶏
 「まもなく電車が出現します」☆☆☆☆
 「いわゆる天使の文化祭」☆☆☆
 「昨日まで不思議の校舎」☆☆☆
 <市立高校シリーズ>4〜6作目。探偵役・伊神さんが卒業してどうなるかと
 思ったけど特に問題ないシリーズ。1作目からの伏線回収も。

215◇七月隆文「ケーキ王子の名推理」☆
 失恋したばかりのケーキ大好き女子高生・未羽が飛び込んだケーキ屋には
 学校一の美青年「冷酷王子」がパティシエとして働いていた。その縁から
 人手がいる時にケーキに釣られて駆り出される、ただの手下となった未羽だが、
 周囲はそうは思ってくれず…。推理ミステリ成分は、おまけ程度。

216◇山田一成・佐藤雅彦「やまだ眼」(再読)☆☆☆
 佐藤さんのコラムがもっと多いといいな。

217◇青井夏海「雲の上の青い空」☆☆☆
 元探偵で今は冴えない宅配業者の寺坂は、友人の代打で交通安全の旗持ちを
 やるはめに。しかしそこで見かけたのは不自然に遅れて歩く一人の少女だった。
 配達で出会うミステリを紐解く連作短編・日常の謎。タイトルと装丁と内容が
 バラバラなのが残念。

218◇茅田砂胡「祝もものき事務所1」☆☆☆
 やる気のない謎の事務所に持ち込まれたのは、状況証拠ありまくりで有罪確定の
 被告人の無罪証明!無気力かつ生活能力無しの所長、だが唯一無二の特異能力で
 起こりえない偶然をひきつけてゆく。新シリーズ開幕編。

219・220◇椎名誠「活字のサーカス」「活字博物誌」(再読)☆☆☆
 1987年初版。今のエッセイよりは内容がぎっしりして、若さも感じられる。

221◇下山弘「江戸古川柳の世界 知的詩情を味わう」☆☆☆
 現代のサラリーマン川柳よりも庶民に広く親しまれた川柳。前句付という簡易
 しばりがあり、選評会に出すには宝くじ1枚分程度の小銭が必要、清書したり
 取り次ぐための業者がいる。開催も選評も有名な誹諧師がやるわけでなく、運営
 できる手腕をもったディレクター的な人が采配し、それに対しスポンサーがいた。
 新聞に自分の投稿が載る・テレビに映る、感じの娯楽だったらしい。

(12月)

222◇松谷みよ子「現代の民話 あなたも語り手、わたしも語り手」☆☆☆
 明治初期から現代都市伝説の隙間、伝聞ながらも「たしかに体験した人がいる」
 という現代民話。公害を知らせに来たカッパ、汽車に対抗する化け狐や化け狸、
 そして戦時中や災害時という未曾有の時期にも…。怪談やホラー・都市伝説など
 「ウケるため・怖がらせるため(に盛られた)」の話でなく、人々の暖かさを
 感じるぼんやりふんわりとした話は興味深い。

223◇西尾維新・荒木飛呂彦「OVER HEAVEN」☆☆
 「ジョジョの奇妙な冒険」スピンオフ小説第二弾、宿敵DIO目線の小説。
 ノートに書いてあるていとしては、言い回しがくだくだしく不自然。
 原作寄りではなく、どこまでも西尾維新の世界観。

224◇吉田禎吾「日本の憑きもの」☆☆
 動物霊のせい、と言われながらも、病気の症状や演技と思われるものが大多数。
 何より、閉鎖的なムラで起こる異質(受け入れがたい・何か気に入らない程度)
 の人・家族への極端な差別感情や悪意を「憑きもの」と正当化したのだと感じる。
 教室のいじめにも通じるものがありそう。

225◇茅田砂胡「天使たちの課外授業5」☆☆☆
 ヴァンツァー編。

226◇野崎昭弘「詭弁学入門」☆☆☆
 正直村と嘘つき村問題など。

227・228◇奥本大三郎「書斎のナチュラリスト」「壊れた壺」☆☆☆
 エッセイ。漱石の硯追跡シリーズは面白い。名品かもしれないけど装飾過多で
 使いにくそう。

229◇石黒マリーローズ「キリスト教文化の常識」☆☆

230◇品川雅彦「三陸鉄道情熱復活物語」☆☆☆
 お荷物の赤字路線と言われ続けた三陸鉄道。震災後すぐ「鉄道を数日で復旧させ
 よう、それが復興の旗頭になる」と、気力体力を尽くして動き続ける日々を追った
 実話本。本書購入で三陸鉄道への寄付になる。

231◇梶よう子「五弁の秋花」☆☆☆
 みとや・お瑛仕入帖シリーズ2作目。

232◇加納朋子「カーテンコール!」☆☆☆☆
 学生減により閉校が決まった女子大学。しかし、閉校後の校舎には、最後の学年
 で留年生は出したくない!と開催された特別講座を受ける卒業保留生徒たちがいた。
 イヤイヤ集まった生徒たちだったが、自分では何ともならないと諦めていた悩み
 に解決方法が見つかり出す。

233◇小路幸也「ヘイ・ジュード」☆☆☆☆
 東京バンドワゴンシリーズ。

234◇廣嶋玲子「白の王」☆☆☆☆
 「青の王」に続くシリーズもの。

235◇阿川佐和子・大石静「オンナの奥義」☆☆☆
 二人の対談集。

236◇川澄浩平「探偵は教室にいない」☆☆☆

237◇さだまさし「銀河食堂の夜」☆☆☆☆
 商店街の片隅にできた狭い居酒屋。無口だが人のよいマスターと、美味しい料理
 に誘われて自然と人の集まる場になっていた。人が集まれば色々な話が集まって
 くるのも道理で…。地の文を語っているキャラクターが誰なのだか最後まで不明。
 昭和テイストがちりばめられている。

238◇住野よる「か「」く「」し「」ご「」と「」」☆☆☆
 男2・女3の仲良し5人組には、それぞれ「かくしごと」がある。ちょっとした特技?
 があることで、お互いに向けた想いがちょっとづつややこしくなる青春物語。

239◇椎名誠「酔うために地球はぐるぐる回っている」☆☆
 お酒に特化したエッセイ。既読の本の抜粋が結構多かった。

240・241◇浅葉なつ「神様の御用人 1・2」☆☆☆
 なぜか祖父の跡目を継ぎ、神様からの用事を解決するお役目に付かされた主人公。
 神様・神学の知識ゼロだが、お役目就任と同時に居着いたキツネ様・黄金をナビ
 がわりに、乏しい給料をやりくりして日本中の神様の元にいくハメになる。

242〜244◇茅田砂胡「祝もものき事務所2〜4」☆☆☆
 調査に関係してくる人々の俗人キャラクターが似すぎて、ちょっと飽きてくる。

  • 最終更新:2019-01-31 16:31:49

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